大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

活動的で繊細なヒレオビウツボ

ウツボ科のヒレオビウツボは全長約50cmになり、高知県以南の太平洋、インド洋に分布している。新種記載されたのは1903年だが、日本では1990年代になって生息が確認されて和名が付いた。体色は紫がかった薄茶色で、体側には暗色の斑紋が入り、目の近くに白くて細長い斑紋があるのが特徴。

ホンソメワケベラの幼魚にクリーニングされる(座間味)

 

これまで座間味島奄美大島で出会っているが、生息場所は砂地にある根で、どちらも同じ環境だった。また、ウツボ類は岩のすき間から顔だけ出してじっとしているイメージだが、本種は異なり、活発で常に移動している。

オトヒメエビのそばを移動中(奄美

 

ウツボ類の中では小型になるが、さらに小さな個体に出会ったことがある。クサビライシの下に隠れていて、顔を出したところでユカタハタからのプレッシャーを受けていた。クサビライシは直径約15cmなので、この個体は20cm未満の若魚に違いない。

ユカタハタのプレッシャーにたじろぐ若魚(座間味)

 

根と砂地の境目あたりを移動していることもあった。隠れる場所がないので、天敵から狙われやすいにもかかわらず、性格的に動いていなければ気が済まないようだ。

根と砂地の境界を移動(座間味)

 

活発に移動するヒレオビウツボのすごいところは、忍者のように気配を消して動くことだ。その証といえるのがケヤリムシ。ダイバーの呼吸音でさえ引っ込んでしまうが、本種が触れても引っ込まないのだ。結果的には長い胴体にこすられて引っ込んでしまうが、最初のうちはケヤリムシも気づかないのかもしれないし、それだけ繊細なのだろう。

ケヤリムシに触れながら移動する(奄美