小さくて透明なエビが岩穴でホバリングしていることがある。ハタ類などが来ると飛び移ってクリーニングする。最初に撮影したのは座間味島で82年。ペンタックス初使用のときなのでよく覚えている。ユカタハタに付いたところを撮ったのだが、写真は残っていない。エビの名はソリハシコモンエビだった。
ユカタハタをクリーニングするソリハシコモンエビ(奄美)
ソリハシコモンエビはマニアの間では「ハリアー」と呼ばれていた。理由は、垂直離着陸攻撃機がハリアーという名称で、ホバリングする姿が似ていたからとか。
ホバリングするソリハシコモンエビ(座間味)
その後、ソリハシコモンエビより赤い斑紋が多いエビを見るようになった。このタイプは座間味やモルディブに多い。また、黄色いタイプも座間味や奄美で見かけるようになった。別種なのか変異なのか気になっていたら、94年に当時日大水産学科で甲殻類の研究をしていた奥野くん(現千葉県立中央博物館・海の博物館)が、赤い斑紋が多いほうをベンテンコモンエビ、黄色いほうをミカヅキコモンエビと和名を提唱し、現在に至っている。だが、なぜか学名は付いていない。
ヒトミハタとベンテンコモンエビ(モルディブ)
ミカヅキコモンエビは、生息数は多くないものの、黄色いのでよく目立つ。しかもクリーニングも熱心なので、撮影しやすい。
クリーニングシュリンプはホバリングしているほうが目に付きやすいが、よく見ると壁や天井にも付いていることが多い。ハタ類がやって来ると、すかさず飛び移ってクリーニングを始める。
90年代後半によく行った富戸では、ソリハシコモンエビが岩穴ではなく、岩の裂け目にいて、いろいろな魚をクリーニングしていた。ところが、ソリハシコモンエビではないらしいという情報が入ってきた。そういわれれば違う気もする。後に別種「クリアクリーナーシュリンプ」と判明した。赤の斑紋の度合がソリハシとベンテンの中間で、角のような額角(がっかく)が、先端から赤、白、赤になっていることだ(他2種は白、赤、白)。唯一この種だけ学名が付いていて、和名がある3種は、ソリハシコモンエビ属の1種A.B.Cになっている。エビも奥が深い。
ウツボをクリーニングするクリアクリーナーシュリンプ(富戸)