大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

アカヒメジの不思議

ヒメジ科は日本に25種分布している。同科の最大の特徴は、下アゴ2本のヒゲがあること。このヒゲを手のように使い、海底に潜むエサを探すことができる。ところが、アカヒメジだけはヒゲを使うところは見られない。アカヒメジの分布は房総半島以南の太平洋、インド洋で、主にサンゴ礁域に群れで暮らす。全長40cmに達するらしいが、出会うのは2030cmのものが多い。

アカヒメジの群れ(ニューカレドニア

 

体色はご覧のように背中が黄色で、腹部は白。中央付近に黄色い縦帯が1本通っている。和名に「アカ」が付くのは、釣り上げられたり死んだりすると赤くなるので、当時の命名者は生きている姿を見ていなかったからだろう。生きているときも岩陰などで休んでいるときは赤っぽくなる。

サンゴの下で休むアカヒメジ。少し赤っぽい(奄美

 

アカヒメジの不思議なところは、いつも海底から離れていて、着底しないこと。そして前述のように、ヒゲを使うところが見られないことだ。

いつも海底から離れている(コモド)

 

アカヒメジはヨスジフエダイやノコギリダイなどと一緒に群れることがある。また、本種の若魚は体高が低いうえ、体色も白っぽい。

アカヒメジの若魚(座間味)

 

あるとき、単独のアカヒメジに出会った。しかもそばにはホンソメワケベラがいて、クリーニングされるところだった。めったに見られない場面なので、赤くなるのを期待して待ったが、気が変わったホンソメワケベラは離れて行ってしまった。いつも海底から離れているので、寄生虫が少ないからだろうか。ところで、エサの件だが、夜になると砂地やガレ場で小動物を食べると図鑑に記してあった。まさか「夜食」だったとは!

ホンソメワケベラにちょっとだけクリーニングされる(奄美