アイゴ科アイゴ属のセダカハナアイゴは全長約35cmになり、紀伊半島以南の琉球列島、小笠原諸島、ニューカレドニアに分布する。80年代終りごろまで近似種のハナアイゴとされていた。しかし、体高が高いタイプは別種らしいと研究され、学名未確定のまま「セダカハナアイゴ」と和名が付けられた。したがって、94年発刊『日本産魚類生態大図鑑』(東海大学出版会)にはセダカハナアイゴの学名はsp.(アイゴ属の1種)と表記されている。2005年に海外の学者により新種記載され、ようやく学名が付いた。
90年代前半、ハナアイゴから分かれたセダカハナアイゴ(座間味)
本種の特徴は体高がやや高く、特に頭部の盛り上がりが大きいこと。また、背ビレ軟条の先端が3~4本に分岐するため、やや太い。とはいえ、外見で判断するのはとても難しい。2019年発刊の『奄美群島の魚類図鑑』(南日本新聞開発センター)の標本写真でも識別は困難。
左がハナアイゴで右がセダカハナアイゴ(奄美群島の魚類図鑑)
ということで、体高がやや高いものを本種としたい。群れで行動する姿も見られるが、角度によって体高が低めに写ることもあるので、実際はわかりにくい。もしかしたら混泳していることも考えられる。海底の藻類をエサにしているので、混泳しても不思議ではない。
群れになってエサを探すセダカハナアイゴ(座間味)
この写真も左の個体は体高が高く、頭部が盛り上がって見える。ところが右の個体は、体型的にはハナアイゴだ。混泳しているとしか見えないが、角度なのかもしれない。
セダカハナアイゴとハナアイゴ?(座間味)
アイゴ類のストック写真の中に、本種が求愛しているカラーポジがあった。1981年にローライマリン(6×6判)で撮ったものだ。「セダカハナアイゴ」と表記されているので、以前図鑑に貸したとき監修者が書いてくれたものと記憶している。まだ生態に詳しくなかった当時、求愛行動に気づき機動性乏しいカメラで撮った自分に、ちょっぴり驚いている。
ローライマリンで撮影したセダカハナアイゴの求愛(座間味)