奄美南部のダイビングポイントの大部分は大島海峡にある。加計呂麻島との間の海域で、入江も多い。数あるポイントの中でパワースポットといえるのは三角岩だ。海岸の断崖が三角に見えることでこの名が付いた。大島海峡の東側の出口近くに位置し、複雑な地形とヤギ類などの刺胞動物や珍しい魚などが見られる。
三角岩で最も神々しい場所。群生するのは刺胞動物のムチヤギ
沖へ向かうと、水深20mくらいから平坦で緩やかな斜面になる。小さな根に10数尾のウロコマツカサが住み着いている。隙間から出ていた個体を狙ったら、次から次から出て来てカメラを見つめていた。ちなみに、ウロコマツカサは他のポイントでは見た覚えがない。
撮ってほしい(?)と次々出てきたウロコマツカサ
停泊用ブイの近くは、水深約6mの平坦なサンゴ礁。浮上時間が迫ると、ここで安全停止しながら過ごす。あるとき、ニザダイ科のナガニザの大群がやって来て、グループ産卵を始めた。近寄って撮影しようとすると海底に降りてしまい、遠くのグループが上昇して放卵・放精する。夢中でシャッターを切ったが、相手も警戒しながらの産卵なので、接近するのは難しかった。とはいえ、迫力ある繁殖行動を間近で見ることができ、感動した。
ナガニザの集団産卵
ウロコマツカサの根とは別方向には、オーバーハングになっている場所がある。ヤマブキスズメダイやハナゴンべがいる。その沖で見慣れない魚に出会った。ハワイの図鑑にはブラックサージョンフィッシュの幼魚とあった。その後小笠原から得られた標本を基に、03年10月「伊豆海洋公園通信」に日本初記録として記載され、メイキュウサザナミハギと命名された。成長すると黒褐色になるので、英名はブラックと付く。
97年に撮影したメイキュウサザナミハギの幼魚
三角岩での初ダイブは92年で、当時からトサヤッコとヤイトヤッコがいた。その後も観察・撮影を続けたが、両種の勢力がよく変わったり、性転換中や両種の雑種と思われる個体が出現したり。とにかく生態的に貴重な場所なのだ。継続して観察・撮影したいのだが、潮流が強くなったり荒れやすい場所なので、そうもいかない。ちなみにトサヤッコ、ヤイトヤッコも他のポイントではほとんど見られない。
トサヤッコのオス(右)がヤイトヤッコのオスを追い払っている