大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

こんにちは赤ちゃん顛末記

昔『マリンダイビング』に「こんにちは赤ちゃん」という連載があった。体色や模様が異なる親子の、赤ちゃんに視点を当てたもの。スタートしたのは861月号で、第1回目を任された。いろいろな方に交代で執筆を依頼する予定なので、見本となる文体を考えて書いてほしいというのだ。それで「ボクはノコギリハギの赤ちゃんで~す!」という書き出しにし、生態や生息状況、親のことなどをわかりやすく書いた。

こんにちは赤ちゃん、1回目と5回目の切り抜き

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このシリーズは7年も続き、数か月後には衣替えし「新・こんにちは赤ちゃん」が始まり、新旧合わせると100回を超えた。今回自分の切り抜きを見直したところ、担当したのは16回だった。そして苦い思い出のページも。ケサガケベラの回(No.7)で、写真はスミツキベラを使ったのだ。これにはワケがあり、執筆1年前に発刊された『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)ではケサガケベラになっていたため、新しいほうが正しいと思ってしまったのだ。単純に写真の入れ違いだったようだが、こんな立派な図鑑でも単純ミスがあることを知った。

ケサガケベラの回の切り抜きと、大図鑑の誤りのページ

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人気シリーズだった「こんにちは赤ちゃん」は、92年10月に単行本になった。連載の中から厳選し、新たに舘石昭氏の写真を加え、34種掲載されている。問題だったケサガケベラは、写真が差し替えられた。

単行本と訂正されたページ

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このシリーズは95年に終了したが、このような連載があったからこそ幼魚に関心が向いたと思っている。その気持ちはずっと続いており、今でも気になった幼魚・成魚は撮るようにしている。このヤシャベラもその一つ。またこのシリーズが始まったら掲載したいと思っていたが、この夏『マリンダイビング』は廃刊になり、その夢は果たせなくなってしまった。

ヤシャベラの幼魚と成魚(座間味)

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