大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

囚人魚 !?

フィリピン、インドネシア、マレーシアなど熱帯海域で潜ると、ゴンズイのような小魚に出会うことがある。最初に出会ったのは27年前のインドネシア・メナド。群れてはいるものの、ゴンズイほど密集していない。海外の図鑑で調べたら、コンビクトブレニーとわかった。全長約30cmになるので、見たのは幼魚だった。

ヤマブキスズメダイの近くを通るコンビクトブレニーの幼魚(メナド)

 

「コンビクト」とは囚人のことで、成魚の体色・斑紋が囚人服に似ていることで命名された。「ブレニー」はギンポの意味で、当初はギンポの仲間だと思われたのだろう。図鑑ではゴンズイの近くに載っているので、分類上も近いと思われる。ちなみに日本には分布しないので、日本の図鑑には載っていない。

全長約4cmの幼魚(フィリピン・リロアン)

 

巣穴は、注意して探せばなんとなくわかり、幼魚が出てくるところも見ることができる。しかし、成魚は警戒心が強いため、顔を出すことはない。

巣穴から出てくる幼魚(ラジャアンパット)

 

成魚はリロアンで見たのだが、前述したようにとても警戒心が強いため、巣穴からちょこっとしか顔を出さない。しかも近寄れないので、はっきりは写せなかった。幼魚は巣穴から次々と出て広い範囲を行動する場合と、巣穴近くでまとまっている場合があり、おそらくエサのプランクトンの流れ具合で行動が変わるのかもしれない。

巣穴から顔を出す成魚とまとまっている幼魚(リロアン)

 

ドイツで出版された魚類図鑑『ASIA PACIFIC REEF GUIDE』(ヘルムート・ディベリウス著、IKAN)には、コンビクトブレニーの成魚の写真が載っていた。どのようにして撮影したかは不明だが、カメラを置いて遠隔操作で撮ったのだろう。お陰で「囚人の服」がよく見えた。

コンビクトブレニーの生態はまだ不明な点が多く、今後の研究に期待したい。

コンビクトブレニーの成魚(『ASIA PACIFIC REEF GUIDE』より)