大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

激レア! アデヤッコ幼魚発見!!

キンチャクダイ科は日本に732種分布している。同科はエラ蓋にトゲがあることが特徴で、チョウチョウウオ科にはないのが相違点。7属の中でサザナミヤッコ属は40cm前後になる大型のグループで、幼魚と成魚の体色・斑紋が著しく異なり、幼魚は紺色の地に白の縞模様という同属共通の特徴を持つ。

サザナミヤッコ属のアデヤッコの成魚(タイ・スミラン諸島)

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アデヤッコは全長約40cmで、慶良間諸島以南の西部太平洋、インド洋に分布している。日本では生息数が少なく、きわめて珍しい。

北限のアデヤッコ(座間味)

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同属の中でサザナミヤッコとタテジマキンチャクダイの幼魚は特徴的でわかりやすいうえ、出会う機会も比較的多い。一方、ロクセンヤッコ、アデヤッコ、ワヌケヤッコの幼魚はよく似ているうえ、ほとんど出会えない。15年前、タイのタオ島でサザナミヤッコ属の幼魚に出会い撮影した。地元のスタッフはワヌケヤッコの幼魚だという。タオ島では同属の成魚はワヌケヤッコが多いので、疑うことはなかった。

7cmのワヌケヤッコといわれた幼魚(タオ島064月)

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手元にある国内外の図鑑や写真集を見てもロクセン、アデ、ワヌケの3種の幼魚はほとんど載っていない。唯一あったのが03年英国から発刊された『Angelfishes』(TMC出版、ヘルムート・デベリュウス、ルディ・クーター、田中宏幸共著)。この図鑑で45mmのアデヤッコの幼魚も載っている(著者ルディ・クーター撮影で、もう1点は水槽写真)。今回改めて詳しく見てみたら、ワヌケヤッコの幼魚の尾ビレは、生涯を通して模様は入らないことがわかった。とすると…

Angelfishes』のアデヤッコのページ。左上の幼魚が水中写真

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残りのアデかロクセンになる。しかしロクセンの場合は体側の白線は少ない。ということで、タオ島で撮影した幼魚はワヌケヤッコではなく、アデヤッコと判明した。撮影したときから5か月後にまたタオ島で幼魚を撮った。ポイントが同じことから同一個体とも考えられるため、斑紋を見比べたら同じ個体で尾ビレの模様が広がっていることもわかった。

今でもアデヤッコの幼魚が撮影されたとか見たという話は伝わってこないので、本当に少ないのだろう。

尾ビレの模様からアデヤッコの幼魚と判明(タオ島、069月)

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今回、ストック写真の中から貴重なアデヤッコの幼魚が発見されたのは、海にも旅行にも行けず、おうち時間が長引くなか、写真を見直したからで、「コロナのお陰」といえなくもない。

ペアで行動するアデヤッコ(コモド)

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