キヘリキンチャクダイはキンチャクダイ科キンチャクダイ属。全長20cmで、相模湾以南の西部太平洋に分布している。尾ビレが黒く、先端に黄色の縁取りがあることが和名の由来と思われる。
『魚類図鑑 南日本の沿岸魚』(1975年 東海大学出版会刊)によると、幼魚は伊豆で、成魚は潮岬で採集されたと記してある。その後の観察例はそう多くない。
本種には尾ビレの周辺部だけが黄色いタイプと尾ビレ全体が黄色いタイプがいることが知られている。地域変異か別種か意見が分かれるところ。日本での生息数はとても少なく、ぼくも高知県・柏島で92年と06年の2度出会ったにすぎない。
キヘリキンチャクダイの未成魚(09年、柏島)
インドネシアのコモド諸島の南エリアはインド洋に接していて、その周辺ではキヘリキンチャクダイがよく見られる。ペアでいることも珍しくない。コモドでは何度も観察・撮影しているが、全部が尾ビレは黄色の縁取りだった。
本種の幼魚は、キンチャクダイの幼魚とそっくり。だが、本種の尾ビレには黒い帯が入っている(キンチャクダイは入っていない)ことで見分けがつく。インドネシアやパプアニューギニアには近似種が数種いるので、柏島の個体は交雑種なのではないだろうか。