大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ロクセンヤッコ 幼魚はどこ?

キンチャクダイ科サザナミヤッコ属のロクセンヤッコは、南西諸島以南の西部太平洋に分布している。全長は約45cmになる。同属は他にサザナミヤッコ、タテジマキンチャクダイ、アデヤッコなどが日本に分布し、すべてが大型で、特に本種が最も大きい。警戒心が強く、接近しての撮影は困難。特に日本ではその傾向が強い。昔、沖縄で追い込み網という漁が盛んだったからだと思う。サンゴ礁外縁や転石帯を単独かペアで行動している。見るのは常に成魚で、幼魚や若魚は見た覚えがない。

ロクセンヤッコのペア(パラオ

 

幼魚は、図鑑にも載っていないことが多い。載っていても水槽写真か標本写真だ。海外の図鑑には載っている場合があり、英国から出版された『Angelfishes』(ヘルムート・デベリゥウス、田中宏幸、ルディー・クーター共著、TMC刊)には3点の幼魚と1点の若魚が掲載されている。サザナミヤッコ属特有の紺地に白の縞模様で、同属他種と比べて白帯がやや太い感じだ。撮影地はいずれもインドネシアの島になっている。

Angelfishes』のロクセンヤッコのページ

 

よく行ったインドネシアのコモド諸島では、ロクセンヤッコもよく見られたが、やはり成魚ばかりだった。でも成魚が多いからこそ幼魚もいる、と納得できたので、今後も出会えることを期待したいと思っている。

ロクセンヤッコ成魚のペア(コモド)

 

日本ではロクセンヤッコになかなか近づけないが、クリーニングステーションで静かに待っていると超接近できることもある。過去に何度も本種のペアがクリーニングに訪れていた根で待っていると、やって来てカクレエビにクリーニングされた。すぐ目の前で観察・撮影できたので、夢のような時間だった。

頬のあたりをカクレエビがクリーニング中(奄美

 

日本の図鑑には、本種はハレムを形成すると書かれている。つまり、1尾のオスが複数のメスを支配する繁殖形態のことだ。しかし、実際に見るのはペアが多い。外見でオスとメスの区別はつかないので、「ペア」が正しいかは別として、どう見てもハレムではないように思えるのだ。さらなる今後の研究に期待したい。

ロクセンヤッコのペア(座間味)