大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

マクロ写真の変遷

今やコンデジも接写機能付きで、誰でも簡単にクローズアップが撮れるようになった。写真を始めたころ(約60年前)からすると、驚異的な進歩だ。クローズアップとは、被写体を大きく写し出すことで、接写ともいい、70年代後半に一眼レフ用のマクロレンズが出てから「マクロ写真」とも呼ばれるように。それ以前は、ベローズ+専用レンズで320倍の高倍率撮影したものがマクロ写真だった。マクロレンズが出る前は、普通のレンズにクローズアップレンズ(接写レンズともいう)を付けて撮るしかなかった。

コンタックスで撮ったクローズアップ写真の数々(85年ごろ.

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水中写真でマクロ写真が流行りだしたのは80年代初めだが、その前のニコノス時代はやはり接写レンズを付けていた。ピント合わせは目測だったため、カメラのレンズに接写レンズをかぶせ、下側に距離棒と撮影範囲枠を取り付ける。枠内が写る仕組みだ。濁った海でも撮れたので画期的な装置だが、泳ぎ回る魚を枠に入れるのは困難。枠をはずして撮る人もいた。接写レンズ以外にもマクロリング(中間リングという)もあり、ボディとレンズの間に入れて使う。

左上はニコノス用接写レンズ装置。下はマクロリング。右はニコノス 28mm+接写レンズで撮ったトウアカクマノミ(82.1  座間味)

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水中で一眼レフを初めて使ったのはペンタックスだったが、翌82年にコンタックス137MDにした。ワインダー付きだったからだ。コンタックスにはプラナー60mmマクロという超高級レンズがあったものの手が出ず、普通の85mmレンズにクローズアップレンズを付け、満足いく結果が得られた。それに加え、標準レンズの50mmも使いたくなり、コンタックスをもう1台増やした。

85mm+クローズアップレンズで撮ったユカタハタ(86.5  座間味)

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コンタックスのハウジングはDIV社のアクリル製なので、5年も使うと劣化する。そこでニコンF3を入手。ハウジングはアメリカ製のツッシーで、レンズは105mmマクロと20mmが使えるようにポートを2種類用意した。105㎜マクロはマニュアルフォーカスで、最短撮影が1/2倍。数年後にオートフォーカスで等倍撮影( 24×36mmのフィルム面に実物大で写る)可能なニュータイプの105mmマクロレンズが出るとは夢にも思わなかった。

105mmマクロで撮ったオキゴンべ(87.11  大瀬崎)

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80年代中ごろよりオートフォーカス一眼レフを各社が開発。ニコンニコン801を発売。専用のハウジング「トリエステ」も出た。これをモニターで使うことになり、ニコン801と60mmマクロを入手。しかし当時のオートフォーカスは性能がイマイチで、マニュアルフォーカスの55mmマクロ、そしてハウジングもネクサスに替えた。そして同時期、ニコンF4が発売された。モータードライブ内臓で、アクションファインダーに交換できることから入手し、ジュノン製ハウジングに入れた。レンズはニュータイプの105mmマクロとフィッシュアイ16mmが使えるようにした。

ニコン4 105mmマクロを使い等倍撮影したカンザシヤドカリ(92.3  座間味)

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マクロ撮影は、肉眼では気づかない部分が見えたり、背景のボケによって被写体を強調できたり、魅力を存分に引き出すことができるため、人気がある。さらに倍率を高くして撮るダイバーも多い。ただ、機材に頼って倍率を上げた写真は、生態を狙うものとしては方向性が違うため、等倍どまりにし、55mmマクロの使用頻度を高くするようにした。ダイビングで見られる魚は10cm前後のものが多く、それらの生態や周辺の環境を写すには最適と考えてのことだ。

55mmマクロで撮ったノコギリハギ。右のメスを巡るオスの争い(96.1  座間味)

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