大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

#生物学

根は、海中社会

砂地やガレ場など平坦な海底にある、小高い岩礁やサンゴ礁を「根」という。きちんとした定義があるわけではないが、ダイバーの視点からすると、幅5m前後、高さ4m前後というのが大まかな大きさだ。こうした根は、条件が揃えば多様な生きものが集まり、よいダ…

ハタタテシノビハゼについて

ハゼ科のハタタテシノビハゼは全長約6cmで、屋久島以南の中・西部太平洋に分布している。サンゴ礁域の転石帯やガレ場などに、共生エビと生息している。最大の特徴は、背ビレの一部が長いことで、おろすと尾柄部に達する。 長い背ビレが特徴のハタタテシノビ…

ピグミーシーホース 巧みな隠蔽術

タツノイトコの仲間の中で特に小型のものをピグミーシーホースという。数種いるので、それぞれ頭に種小名を付けて区別することが多い。最も有名なのがこのバージバンティ・ピグミーシーホースだ。ニューカレドニア産の標本を基に1970年に新種記載された。大…

生誕70年 星野道夫展

写真家・星野道夫生誕70年を記念し、東京都写真美術館にて開催中の写真展「悠久の時を旅する」。11/19に見に行ったが、会場は撮影禁止だったので、取り上げるつもりはなかった。 「星野道夫 悠久の得を旅する」のチラシ ところが、22日にNHK NEWS「おはよう…

ヘラヤガラの知られざる生態

ヘラヤガラ科のヘラヤガラは相模湾以南の太平洋、インド洋に広く分布している。ダイビングで見かけるものは、全長70cm前後のものが多い。普通種にもかかわらず、生態はあまり知られていない。肉食性で、小魚や小型甲殻類が主食だが、生きているものしか食べ…

いい色の日

きょう11月16日は語呂合わせで「いい色の日」だそうだ。というワケで、いい色の画像を集めてみたい。とはいえ、「いい色」のきちんとした定義はないので、各自の好みということになるのだろう。 座間味島がある慶良間諸島の海はきれいで有名。したがって「ケ…

第26回 あでやっこ水中写真展

関西を中心に女性だけで結成された水中写真倶楽部「あでやっこ」。今年で29年目になる。当初より写真展を開催していたが、神戸淡路大震災の年と、コロナ禍の20年、21年の計3回中止になったため、数が合わない。 それはさておき、写真展が3年ぶりに11月10日~…

久々のダイビング(2)

今日11月11日は「チンアナゴの日」。というワケで、チンアナゴを。5年前の「ダーウィンが来た!」でチンアナゴを撮影した、まさに同じポイントで狙ってみた。流れがあったせいか、体をかなり出してプランクトンを食べていた。数も増えた感じだ。 チンアナゴ …

久々のダイビング(1)

本当に久しぶりにダイビングした。それも沖縄・座間味島で。ダイビング自体は2年ぶりだが、座間味は2017年「ダーウィンが来た!」のチンアナゴのロケ以来なので、ナント5年ぶりになる。そのため、建物が増えて風景が変わっていた。長年訪れなかったにもかか…

砂にまぎれる魚

砂地に生息するのはヒラメやカレイという印象だが、そうとは限らない。体に砂をかぶり、目と口だけ出している魚も多い。外敵やエサとする小魚に気づかれないようにするためだ。砂地を移動しているとき、そのような魚を見つけると、やったーという気持ちにな…

意外性多いウツボ

10/27のNHK「あさイチ」で不定期のコーナー「愛でたいnippon」があり、高知県特集だった。その中で、ウツボ料理が紹介されていた。多くの方はウツボを食べる習慣はないと思うが、高知では昔から食べられていて、特に冬季が旬だそうだ。 高知の一部の地域で食…

魅力的  魚の正面顔(2)

チョウチョウウオはわりあい行動的なので、正面から撮るのは難しい。しかし、沖縄に生息するものは岩陰で休んでいることが多いため、チャンスがある。 口をゆがめたようなチョウチョウウオ(座間味) アデウツボは、口の中が黄色いのが特徴。生息数が少なく…

魅力的  魚の正面顔(1)

魚の顔を正面から見ると、表情がわかりやすくて魅力的だ。それゆえ機会あるごとに正面から撮るようにしているが、底生魚以外は難しい。動く魚を正面から撮るには、それなりの駆け引きが必要になる。 ニシキヤッコは警戒心が強い反面、好奇心も強い。そのため…

尾ビレが特徴  タコベラ

ベラ科のタコベラは全長約13cmになり、千葉県以南の西部太平洋、インド洋に分布している。サンゴ礁域の転石帯や岩場、藻場などに生息する。基本的な体色は赤茶だが、生息環境などによって変異がある。特徴は尾ビレで、広げるとひし形あるいは四角形に見える…

ツバメウオが体を倒すワケ

マンジュウダイ科のツバメウオは全長約60cmに達し、北海道以南の西部太平洋に分布している。若魚や成魚の生息域は、伊豆より南にあたる。ツバメウオは時折体を倒すことがある。なぜなのだろうか。 体を倒すツバメウオ(奄美) 体を倒すのは、動かないときが…

温帯域に適応 スジベラ

ベラ科のスジベラは全長約18cmになり、相模湾以南の西部太平洋に分布している。砂地と岩場が混在する転石帯でよく見られる。メスは赤茶色の体色で、白い横縞がある。環境によって体色に変化があるようで、白い砂地に生息する個体は腹部が白くなり、岩場のも…

宝石サンゴについて

公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所発行の『Ocean Newsletter』No.532号が届いた。以前は紙媒体だったが、数年前よりメールマガジンに代わっている。主に海洋に関する研究者が研究・調査で得られたことについて毎号三つのレポートが掲載されている。今…

けんかとなかよし

詩人の谷川俊太郎さんとイラストレーターのNoritakeさんが手がけた絵本『へいわとせんそう』(ブロンズ新社)。先月だったか、テレビで紹介されたのを見て、感動した。シンプルなイラストと短いタイトルで平和と戦争を対比。誰にでもわかりやすく、しかも考…

複雑 オニカサゴの世界

フサカサゴ科オニカサゴ属のオニカサゴは全長約25cmになり、房総半島以南に分布している。比較的平べったい体型で、口の周りに皮弁がある。1990年ごろまではサンゴ礁域にも分布しているとされていたが、奄美や沖縄に生息するものは別種のサツマカサゴ、ウル…

絶好の被写体 ユカタハタ

ハタ科のユカタハタは全長約40cmになり、伊豆半島以南の太平洋、インド洋に分布している。サンゴ礁域ではお馴染みのハタで、鮮やかな赤に無数の青い斑点があり、とても美しい。比較的生息数が多いうえに大きさも手ごろで、警戒心もあまりないためよい被写体…

タカノハダイ科について

タカノハダイ科は、1属3種日本に分布している。タカノハダイ属のタカノハダイ、ミギマキ、ユウダチタカノハの3種だ。同属は胸ビレが長く、海底で休む際に体を支えたり、エサを探るのに役立つ。エサはヨコエビ類などの小型底生動物。いずれも温帯域に適応して…

生中継番組に思う

9/10(土)午後1時50分よりNHKで「ニッポン 今つないでみたら」という生中継番組があった。北海道や沖縄など9か所とスタジオとで中継を結び、午後6時までの長丁場。ウミガメが海中を泳ぐ予告で、慶良間諸島・座間味島からの中継もあるというので、要所要所見…

メギスのメスは一体どこに? 

メギス科のメギスは全長約15cmに達し、和歌山県以南の西部太平洋に分布している。サンゴ礁の岩のすき間などに生息し、用心深い性格にもかかわらず、好奇心も強い。メギスは確か、以前オキナワメギスと呼ばれていたと思う。 メギスのオス(奄美) 75年発刊の…

深場に住み分け アオスジスズメダイ

スズメダイ科のアオスジスズメダイは全長約5cmで、高知県以南の西部太平洋に分布している。黄色ぽい体色で、口から背中にかけて青い筋があるのが特徴。これが和名の由来になっている。もう一つの特徴は、生息場所が水深25m以深ということ。 アオスジスズメダ…

体色変化著しいアオノメハタ 

ハタ科のアオノメハタは全長約40cmで、伊豆半島以南の西部太平洋、インド洋に分布している。サンゴ礁域が主な生息場所。褐色の地に青い斑点が全体に入っていることが和名の由来と思われる。体側後部には白い横帯が5~6本入っているが、薄くなることもある。 …

オハグロベラ近縁種に和名

ベラ科オハグロベラ属のオハグロベラは、青森県以南~九州南部、朝鮮半島南部、台湾、中国沿岸に分布している。温帯域に適応したベラで、琉球列島や熱帯海域には分布していない。ところが、1985年に慶良間諸島でオハグロベラらしきベラを見つけて撮影した。…

スミレナガハナダイの体色 

ハタ科のスミレナガハナダイは、全長約10cmになる。駿河湾以南の中・西部太平洋に分布している。主な生息場所は、サンゴ礁外縁の断崖付近。オスは赤紫色で、体側に四角い形をした淡い模様がある。メスは明るいオレンジ色で、目の下に紫色の線がある。オスは…

最近の海関連テレビ

7/30 Eテレ「地球ドラマチック」は、ガラパゴスが舞台。海洋学者一家がガラパゴスに滞在し、自然や生きものに接しながら保護の重要性を伝えるドキュメンタリー。最近深刻なのが海洋プラスチックで、有害物質を吸着する性質があるため、その調査チームに同行…

サンゴ白化の原因はストレス!? 

このところ毎年のようにサンゴの白化現象のニュースが流れるので、高水温が続くとサンゴが白化する、というのは一般の方にも知れ渡ったようだ。これとは逆に低水温でも白化することが2017年に判明した。和歌山県田辺市で、環境省が地元ダイバーの協力を得て…

マダラエイについて 

アカエイ科のマダラエイは、紀伊半島以南の太平洋、インド洋に分布している。体盤幅(たいばんはば)は約2mに達する。通常魚の大きさは、吻の先端から尾ビレの先までの全長だが、エイ類の場合は、背中側から見て両胸ビレの最も幅が広いところを測る、体盤幅…