大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

宝石サンゴについて

公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所発行の『Ocean NewsletterNo.532号が届いた。以前は紙媒体だったが、数年前よりメールマガジンに代わっている。主に海洋に関する研究者が研究・調査で得られたことについて毎号三つのレポートが掲載されている。今号で興味深かったのが宝石サンゴだった。

「宝石サンゴの保護育成と持続的な活用にむけて」というタイトルで研究発表されたのは高知大学海洋コア総合研究センターと(公財)黒潮生物研究所。

宝石サンゴは、宝飾品やアクセサリーとして昔から利用されている。起源は地中海産のベニサンゴといわれ、正倉院にもシルクロードを経て運ばれてきた宝石サンゴの装飾品が残っているという。日本では明治以降宝石サンゴの商業的漁獲が高知県室戸沖で始まった。海底の宝石サンゴを網で絡めとる漁法で、当時地中海産のベニサンゴが枯渇し始めたため、それを補うかたちで日本は一大産地になり、最大の輸出品目になったこともあったらしい。

アカサンゴ群体                  骨軸を磨いて宝飾品に

 

宝石サンゴは、サンゴ礁を形成する造礁サンゴとは別のグループで、水深100600mの海底に生育している。日本ではアカサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴが知られ、いずれも骨軸が緻密なため、研磨すると光沢のある宝飾品になる。しかし成長がとても遅いため、資源の枯渇が懸念され、禁漁区の拡大などさまざまな規制を設けて対処してきた。現在、鹿児島県や沖縄県では遠隔操作型潜水機で視認しての漁獲のみを許可しているという。

資源保護のため、さらに研究されているのが人為的増殖の取り組み。その一つは、漁獲された商品価値が低いサンゴの枝先を水槽で育て、開発したコンクリート製基質に埋め込み、元の海底に戻して生育させるという方法。

上はアカサンゴの枝先を植えた円盤基質。下は水深100mの海底に設置したもの

 

また、エポキシ樹脂を使って枝先を小型漁礁に埋め込み、成長を確認しているという。

1年経過して成長が見られた枝先(白丸の部分)

 

もう一つは、水槽で宝石サンゴの種苗をつくり、海に戻すこと。そのためには繁殖など基礎的な生活史を知る必要がある。最近では水槽でオスの群体から繁殖の兆候が撮影できたとのこと。このような生活史に関する研究は、持続可能な資源の利用や保全体制の構築を検討する上での基礎的な知見につながるため、今後も継続していく必要がある、と結んでいる。

アカサンゴのポリプの部分から放出された精子嚢(矢印の先)