大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

複雑 オニカサゴの世界

フサカサゴオニカサゴ属のオニカサゴは全長約25cmになり、房総半島以南に分布している。比較的平べったい体型で、口の周りに皮弁がある。1990年ごろまではサンゴ礁域にも分布しているとされていたが、奄美や沖縄に生息するものは別種のサツマカサゴ、ウルマカサゴセムカサゴということがわかった。その後さらに研究が進み、日本のサンゴ礁域に生息するオニカサゴ属は細分化された。

オオウルマカサゴと思われる個体(座間味)

 

2018年に発刊された『日本魚類館』(小学館)によると、セムカサゴはニライカサゴに、ウルマカサゴはオオウルマカサゴに改名された。サツマカサゴはそのままだが、ミミトゲオニカサゴ、イヌカサゴが新たに加わった。

『日本魚類館』のオニカサゴ属のページ

 

この中でニライカサゴは背中が盛り上がっているので見分けやすいが、他の4種はよく似ているため、外見だけで識別するのは困難。

ニライカサゴは縄張り争いで噛み合うこともある(座間味)

 

オニカサゴ属の魚はどれもカムフラージュが得意で、気づかない場合も多い。後で撮影した画像を見ても、どの部分にいるのかわからないこともよくある。『日本魚類館』には、日本のサンゴ礁域でオニカサゴといわれたものは、ほとんどイヌカサゴと記されている。

岩と同化しているイヌカサゴと思われる個体(水納島

 

昔、オニカサゴの顔にウミウシが乗っている場面を目撃した。もしかしたらウミウシは岩と間違えていたのかもしれない。

ミミトゲオニカサゴと思われる個体に乗るウミウシ(座間味)

 

このところ魚類の分類学の研究が目覚ましい。一つの種が分かれることもよくある。研究が進むことはよいことだが、外見で見分けがつかないことも多いため、ダイバーにとってはありがた迷惑と言えないこともない。

オオウルマカサゴと思われる個体(座間味)