大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

#自然観察

スミツキソメワケベラの習性

クリーニングフィッシュとしてよく知られているのは、ベラ科ソメワケベラ属のホンソメワケベラ。同属にスミツキソメワケベラがいる。全長約7cmで、胸ビレの下にある黒斑が特徴。慶良間諸島以南の西部太平洋に分布するが、日本にはきわめて少ない。 あくびを…

奇妙で美しいシーアップル

シーアップルという生物がいる。丸い形をしていて、大きさは10数cm。色は赤が基本のようだが、バリエーションは豊富。上部からフサフサの触手が現れることもあり、これでプランクトンを付着させる。ここまで読んで、これがナマコの仲間だと思う人はまずいな…

春を探しに

春が待ち遠しくて、探しに行った。行先は江東区の亀戸天神の梅まつり。紅白の梅の花が咲いてはいたが、つぼみの状態のものやまったく咲いていない枯れ枝のようなものもあった。 亀戸天神境内の梅 梅まつりは2月4日~3月5日の1か月間で、種類によって満開の時…

ウミガメと関わる魚たち

サンゴ礁域で出会えるウミガメは、アオウミガメかタイマイがほとんんど。これらのウミガメと関わる魚もいる。そんな魚たちを取り上げてみよう。まずはコバンザメ。アオウミガメに付くことがあり、その理由は寄生虫を食べるためとの説もあるが、定かではない…

ニセクラカオスズメダイについて

スズメダイ科のニセクラカオスズメダイは全長約10cmで、八重山諸島以南の西部太平洋に分布している。クラカオスズメダイと似ているものの、本種には縞模様がない。日本の図鑑に初めて載ったのは1984年発刊の『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)で、八重…

意外に多いササムロ

タカサゴ科のササムロは全長約30cmになり、奄美および八丈以南の西部太平洋、インド洋に分布する。同科のタカサゴとよく似ていることから、混同されやすい。そのため、知名度は低い。 ササムリ(コモド) 両種の外見的な違いは尾ビレで、タカサゴは上下の先…

ハオコゼについて

ハオコゼ科のハオコゼは全長約10cmになり、本州中部以南、朝鮮半島南部に分布している。浅瀬の岩場や藻場に生息する。特徴は背ビレで、前のほうの数本のトゲが長い。このトゲには毒がある。体色は赤味がある茶色で、その中に複雑で保護色効果のある斑紋が入…

「ニモ」の真実

ディズニー映画の「ファインディング・ニモ」が大ヒットしたのは20年前。当時カクレクマノミは魚類一の人気者に。正確には、イースタンクラウンアネモネフィッシュという近縁種だが。両種は背ビレのトゲの数が違うため別種になっているものの、外見では区別…

ツマジロモンガラの体色

モンガラカワハギ科のツマジロモンガラは全長約25cmになり、相模湾以南の西部太平洋、インド洋に分布している。生息域はサンゴ礁域で、九州以北で見られるのは幼魚や若魚と思われる。体色は茶色だが、個体によって微妙に異なる。最大の特徴は、尾ビレの先端…

水中写真を使った年賀状 2023

水中写真を使った年賀状を紹介するのが恒例になっている。今年は11通と例年に比べると少なくなった。やはり海外に行けない事情があったので、しかたがないだろう。 今年いただいた水中写真の年賀状 11通の中から気に入ったものを選んでみた。選ぶ基準は、撮…

コガネアジの生態

アジ科のコガネアジは全長約40cmになり、琉球列島以南の西部太平洋、インド洋、紅海に分布している。主にサンゴ礁域に生息し、単独~数尾のグループで行動している。日本ではあまり見られない。体色は銀色で、体側に黄色の斑点がある。和名は黄色い個体が多…

干支にちなんだ海の生物

うさぎにちなんだ海のいきものは、ウミウサギガイかラビットフィッシュしか思い浮かばなかった。ラビットフィッシュはアイゴ類のことだ。ところが、うさぎを連想させる海のいきものを集め、特別企画展を新江ノ島水族館で開催というニュースを見た。それには…

ロウニンアジの生態

アジ科のロウニンアジは、茨城県以南の太平洋、インド洋に分布している。ただし九州以北で見られるのは主に幼魚。成魚は熱帯海域に多い。全長150cmに達する。体色は他のアジ科魚類同様に銀色だが、黒っぽくなることも多い。比較的体高が高く、背面に引っかき…

根は、海中社会

砂地やガレ場など平坦な海底にある、小高い岩礁やサンゴ礁を「根」という。きちんとした定義があるわけではないが、ダイバーの視点からすると、幅5m前後、高さ4m前後というのが大まかな大きさだ。こうした根は、条件が揃えば多様な生きものが集まり、よいダ…

ハタタテシノビハゼについて

ハゼ科のハタタテシノビハゼは全長約6cmで、屋久島以南の中・西部太平洋に分布している。サンゴ礁域の転石帯やガレ場などに、共生エビと生息している。最大の特徴は、背ビレの一部が長いことで、おろすと尾柄部に達する。 長い背ビレが特徴のハタタテシノビ…

ピグミーシーホース 巧みな隠蔽術

タツノイトコの仲間の中で特に小型のものをピグミーシーホースという。数種いるので、それぞれ頭に種小名を付けて区別することが多い。最も有名なのがこのバージバンティ・ピグミーシーホースだ。ニューカレドニア産の標本を基に1970年に新種記載された。大…

生誕70年 星野道夫展

写真家・星野道夫生誕70年を記念し、東京都写真美術館にて開催中の写真展「悠久の時を旅する」。11/19に見に行ったが、会場は撮影禁止だったので、取り上げるつもりはなかった。 「星野道夫 悠久の得を旅する」のチラシ ところが、22日にNHK NEWS「おはよう…

ヘラヤガラの知られざる生態

ヘラヤガラ科のヘラヤガラは相模湾以南の太平洋、インド洋に広く分布している。ダイビングで見かけるものは、全長70cm前後のものが多い。普通種にもかかわらず、生態はあまり知られていない。肉食性で、小魚や小型甲殻類が主食だが、生きているものしか食べ…

いい色の日

きょう11月16日は語呂合わせで「いい色の日」だそうだ。というワケで、いい色の画像を集めてみたい。とはいえ、「いい色」のきちんとした定義はないので、各自の好みということになるのだろう。 座間味島がある慶良間諸島の海はきれいで有名。したがって「ケ…

第26回 あでやっこ水中写真展

関西を中心に女性だけで結成された水中写真倶楽部「あでやっこ」。今年で29年目になる。当初より写真展を開催していたが、神戸淡路大震災の年と、コロナ禍の20年、21年の計3回中止になったため、数が合わない。 それはさておき、写真展が3年ぶりに11月10日~…

久々のダイビング(2)

今日11月11日は「チンアナゴの日」。というワケで、チンアナゴを。5年前の「ダーウィンが来た!」でチンアナゴを撮影した、まさに同じポイントで狙ってみた。流れがあったせいか、体をかなり出してプランクトンを食べていた。数も増えた感じだ。 チンアナゴ …

久々のダイビング(1)

本当に久しぶりにダイビングした。それも沖縄・座間味島で。ダイビング自体は2年ぶりだが、座間味は2017年「ダーウィンが来た!」のチンアナゴのロケ以来なので、ナント5年ぶりになる。そのため、建物が増えて風景が変わっていた。長年訪れなかったにもかか…

砂にまぎれる魚

砂地に生息するのはヒラメやカレイという印象だが、そうとは限らない。体に砂をかぶり、目と口だけ出している魚も多い。外敵やエサとする小魚に気づかれないようにするためだ。砂地を移動しているとき、そのような魚を見つけると、やったーという気持ちにな…

意外性多いウツボ

10/27のNHK「あさイチ」で不定期のコーナー「愛でたいnippon」があり、高知県特集だった。その中で、ウツボ料理が紹介されていた。多くの方はウツボを食べる習慣はないと思うが、高知では昔から食べられていて、特に冬季が旬だそうだ。 高知の一部の地域で食…

魅力的  魚の正面顔(2)

チョウチョウウオはわりあい行動的なので、正面から撮るのは難しい。しかし、沖縄に生息するものは岩陰で休んでいることが多いため、チャンスがある。 口をゆがめたようなチョウチョウウオ(座間味) アデウツボは、口の中が黄色いのが特徴。生息数が少なく…

魅力的  魚の正面顔(1)

魚の顔を正面から見ると、表情がわかりやすくて魅力的だ。それゆえ機会あるごとに正面から撮るようにしているが、底生魚以外は難しい。動く魚を正面から撮るには、それなりの駆け引きが必要になる。 ニシキヤッコは警戒心が強い反面、好奇心も強い。そのため…

尾ビレが特徴  タコベラ

ベラ科のタコベラは全長約13cmになり、千葉県以南の西部太平洋、インド洋に分布している。サンゴ礁域の転石帯や岩場、藻場などに生息する。基本的な体色は赤茶だが、生息環境などによって変異がある。特徴は尾ビレで、広げるとひし形あるいは四角形に見える…

ツバメウオが体を倒すワケ

マンジュウダイ科のツバメウオは全長約60cmに達し、北海道以南の西部太平洋に分布している。若魚や成魚の生息域は、伊豆より南にあたる。ツバメウオは時折体を倒すことがある。なぜなのだろうか。 体を倒すツバメウオ(奄美) 体を倒すのは、動かないときが…

温帯域に適応 スジベラ

ベラ科のスジベラは全長約18cmになり、相模湾以南の西部太平洋に分布している。砂地と岩場が混在する転石帯でよく見られる。メスは赤茶色の体色で、白い横縞がある。環境によって体色に変化があるようで、白い砂地に生息する個体は腹部が白くなり、岩場のも…

宝石サンゴについて

公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所発行の『Ocean Newsletter』No.532号が届いた。以前は紙媒体だったが、数年前よりメールマガジンに代わっている。主に海洋に関する研究者が研究・調査で得られたことについて毎号三つのレポートが掲載されている。今…