シーアップルという生物がいる。丸い形をしていて、大きさは10数cm。色は赤が基本のようだが、バリエーションは豊富。上部からフサフサの触手が現れることもあり、これでプランクトンを付着させる。ここまで読んで、これがナマコの仲間だと思う人はまずいないだろう。
美しいシーアップル(コモド)
信じられないかもしれないが、ナマコの仲間なのだ。通常のナマコは砂底に生息し、砂泥や腐敗物を口に入れて栄養分を取り込んでいる。なのでプランクトン食のナマコ自体が珍しい。また、形や体色も通常のナマコとは程遠い。
触手が黄色いシーアップル(コモド)
シーアップルの分布はきわめて狭く、インドネシアのコモド諸島と、フィリピンのみ。フィリピンのものは別種らしいので、コモドの固有種ということになる。それもコモドならどこでも見られるというものではない。南エリアのごく一部の海域なのだ。水温が22℃くらいのところで、熱帯海域としてはかなり低い。
触手をしまい込み始めた個体(コモド)
プランクトン食なので、当然潮の流れがあると触手を広げるはずなのだが、必ずしもそうならない。タイムラグなのだろうか、理由はよくわからない。
触手を広げていないことも
触手の根元は枝状で10本あり、付着させたプランクトンは根元まで口に入れ、しごくようにして食べる。このときばかりは確かに「動物」だと実感できる。海の中にも奇妙な生きものがいるものだ。
触手を口に入れて付着したプランクトンを食べる(コモド)