ハオコゼ科のハオコゼは全長約10cmになり、本州中部以南、朝鮮半島南部に分布している。浅瀬の岩場や藻場に生息する。特徴は背ビレで、前のほうの数本のトゲが長い。このトゲには毒がある。体色は赤味がある茶色で、その中に複雑で保護色効果のある斑紋が入っている。
ハオコゼのメス(佐渡)
背ビレのトゲの長さは、オスのほうが長い。当然ながら少しでも長いほうが、縄張りや繁殖などに関して有利になる。エサは小型甲殻類で、食べるのは夜だという。本種は伊豆にも分布しているのだが、出会った記憶がない。写真が残っているのは佐渡だけ。
ハオコゼのオス(佐渡)
背ビレを倒している個体がいた。縄張り争いに敗れたのだろうか。体がやや小さかったので、若いオスなのかもしれない。
若いオス(佐渡)
1989年に緑書房から『海水魚の繁殖』が出版された。全国の各水族館が水槽で飼育・繁殖させた魚類や無脊椎動物約50種の観察記録や写真が掲載されている。表紙や口絵写真を貸した関係で本をいただいたが、この中に、東海大学海洋科学博物館のハオコゼの繁殖生態もある。それによると、初夏の夜に産卵すると記されている。自然状態で撮影したかったが、佐渡でのナイトダイビングはハードルが高く、実現しなかった。
『海水魚の繁殖』表紙と、ハオコゼの繁殖関連ページ
水槽での観察記事には、若いオスは産卵の20~30分前になると中層を遊泳する。一方、大型のオスは海底にいるメスの前で背ビレを広げ、トゲを誇示する。これが求愛とある。メスが海底から離れて浮かぶと、大型オスも後を追い、並んで上昇して放卵・放精するが、先に遊泳していた若いオスも加わり、5~6尾のオスが集団で産卵するという。こうした現象は水槽内だから起きるのかは定かでない。魚類の生態はわからないことばかりだ。
大型のオス(佐渡)