ディズニー映画の「ファインディング・ニモ」が大ヒットしたのは20年前。当時カクレクマノミは魚類一の人気者に。正確には、イースタンクラウンアネモネフィッシュという近縁種だが。両種は背ビレのトゲの数が違うため別種になっているものの、外見では区別がつかない。ニモの分布はニューギニア島からオーストラリア北東部まで。一方カクレクマノミは奄美以南オーストラリア北西部までの西部太平洋に分布する。そのため英名はウエスタンクラウンアネモネフィッシといい、分布で見分けられる。
ニモことイースタンクラウンアネモネフィッシュ(インドネシア・マノクワリ)
体側の白い斑紋に黒の縁取りがあるのがイースタンクラウンアネモネという印象だが、そうとは限らない。黒の縁取りがあるのはハタゴイソギンチャクに住むからなのだ。同じ海域のセンジュイソギンチャクに住む個体は縁取りがない。
センジュイソギンチャクに住む個体(インドネシア・マノクワリ)
ニューギニア島のすぐ西に位置するラジャアンパットも分布的にはイースタンクラウンアネモネ(ニモ)だが、やはりセンジュイソギンチャクに住む個体は縁取りがない。
丸くなったセンジュイソギンチャクとニモ(ラジャアンパット)
それでは日本でハタゴイソギンチャクに住むカクレクマノミはどうだろうか。黒い縁取りが多少現れるが、さほど太くはならない。
ハタゴイソギンチャクに住むカクレクマノミ(座間味)
映画のニモはグレートバリアリーフ(GBR)生まれで、確か黒の縁取りはない。それでカクレクマノミと誤解された。もう一つは、同時期に日本からパプアニューギニア(PNG)への直行便が就航し、PNGの海中も紹介され始め、その中でハタゴイソギンチャクに住むイースタンクラウンアネモネもよく目にするようになり、同種は縁取りがあるものという概念が生じたのだろう。
センジュイソギンチャクに住むイースタンクラウンアネモネフィッシュ(GBR)