日本に分布するクマノミ類の中で、クマノミに次いで生息数が多いのはハナビラクマノミ。最近かなり繁栄している。繁殖行動は他種と変わらないのに、いったいどうしてだろうか。その秘密はイソギンチャクの「乗っ取り」にある。
ハナビラクマノミが住めるのはセンジュイソギンチャク、シライトイソギンチャク、ハタゴイソギンチャクなので、競合相手はカクレクマノミとクマノミの2種。乗っ取るのはカクレクマノミが住むセンジュイソギンチャクが多い。3年前に撮った写真ではカクレクマノミだったが、昨年10月にはハナビラクマノミに代わっていた。
証拠写真は困難だが、ハナビラクマノミが乗っ取ったイソギンチャクは知っているだけでも6つある。こうしたことは詳しいダイバーには知られているが、その理由まではわからないのが実情だ。
沈船の舳先の板にセンジュイソギンチャクとカクレクマノミが住んでいた。
センジュイソギンとカクレクマノミ(12年、コモド)
4年後には周囲の板は朽ち果てて、住人?もハナビラクマノミに代わっていた。
住人?はハナビラクマノミに(16年、コモド)
クマノミがハナビラクマノミに代わったのは撮影した。交代劇のきっかけは、ハナビラクマノミの稚魚の侵入だ。稚魚がイソギンチャクに入って成長すると、何かが起こるのだ。ただ、争って追い出すとは考えにくい。もしそうなら誰かが観察し、知れ渡るはずだから。
シライトイソギンチャクに住むクマノミ(07年、座間味)
このピンクのイソギンチャクは、約20前から撮影している。そのころの写真にもハナビラクマノミの稚魚が写っていた。先述したように、成魚になって喧嘩して追い出すとは到底考えられない。嫌がる物質を分泌するのかもしれないし、その辺りは謎だ。
ハナビラクマノミに代わっていた(09年、座間味)