大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

2020-01-01から1年間の記事一覧

浮遊型クリーナーシュリンプ

小さくて透明なエビが岩穴でホバリングしていることがある。ハタ類などが来ると飛び移ってクリーニングする。最初に撮影したのは座間味島で82年。ペンタックス初使用のときなのでよく覚えている。ユカタハタに付いたところを撮ったのだが、写真は残っていな…

トモシビイトヒキベラについて

1995年、伊江島でイトヒキベラの仲間を撮影した。ヒレを広げると、背ビレと尻ビレがオレンジ色なのだ。3か月後、「伊豆海洋公園通信」(95年10月号)に日本初記録として記載され、トモシビイトヒキベラと命名された。背ビレのオレンジが「灯火」みたいという…

南限を越えた魚たち

温帯域の魚類は屋久島付近が南限とされ、サンゴ礁域の魚類は奄美付近が北限とされている。つまり、屋久島と奄美大島の間には生物の境界線があるのだ。とはいえ、黒潮が流れているため、サンゴ礁域の魚が北へ分布を広げているのは確か。一方、温帯域の魚が南…

暖かいのは苦手・ミナミゴンべ

ゴンべ科オキゴンべ属のミナミゴンべは全長約12cmに達し、相模湾以南の西部太平洋に分布している。赤茶系の斑紋が全身に入り、目の後ろに目玉模様がある。斑紋の色や形は、個体によって多少異なる。 ミナミゴンべ(三宅島) 80年代初めごろ、沖縄の慶良間諸…

トンガリサカタザメ科の新種

きのう(25日)夕方のNHKニュースで、水族館に展示中のエイが新種だったと報じた。 エイの新種が見つかったというNHKニュース その水族館とは鹿児島県の「いおワールドかごしま水族館」で、展示されていたトンガリサカタザメが新種だったというのだ。開館当…

混沌・アラレキンチャクフグの軌跡

1995年、奄美で見慣れぬフグを撮影した。特徴は背ビレつけ根に目玉模様があること。当時日本の魚類図鑑には載っていなかった。その直後に入手した海外の図鑑(94年発刊)には載っていて、英名はFalse-eye pufferで、学名はCanthigaster papua だった。英名は…

ダンダラスズメダイについて

スズメダイ類には主に藻類を食べるものもいる。ダンダラスズメダイもその一種。全長約15cmで、琉球列島以南の西部太平洋に分布している。生息場所は、岩やサンゴの根元に藻類が繁茂している内湾。日本では八重山諸島に多い。 藻が繁茂している環境に住むダン…

最近読んだ本

①『温暖化で日本の海に何が起こるのか』(山本智之著 講談社刊) 知人の朝日新聞社記者・山本氏から新刊(上記)を出したとの連絡があった。氏は5年前にも『海洋大異変』(朝日新聞出版)を出版していて、その続編と捉えることもできる。 本書は、気候変動に…

人気者・ミナミハコフグ裏話

今でこそ黄色に黒い斑点の幼魚を知らないダイバーはいない。そう、ミナミハコフグだ。しかし、80年代初めまではハコフグと混同されていた。ミナミハコフグが新種記載されたのは1758年とかなり昔。それからなんと226年後,『日本産魚類大図鑑』(1984年発刊、…

シマタレクチベラの成長過程

ベラ科のシマタレクチベラは全長約40cmになり、伊豆半島以南の中・西部太平洋、インド洋に分布する。成魚が普通に見られるのは、奄美以南のサンゴ礁域になる。繁殖期になると、オスが数尾のメスを支配するハレムを形成する。 シマテレクチベラのメス(座間味…

NHKBS「ワイルドライフ」放送日決まる

7月にコロナ禍のなか、奄美大島へロケに行った。NHKBSプレミアムの「ワイルドライフ」の取材だ。「ワイルドライフ」は独自に取材する場合もあるが、多くは「ダーウィンが来た!」で取材したものをベースに、新たに取材した映像も含めて制作する。 ワイルドラ…

浅草にバーンガイカーディナル

ドン・キホーテの入口には、水槽がある。お馴染みの海水魚がいたり、入れ替わったりするので、浅草店の水槽はときどきチェックしている。先日、なんとバーンガイカーディナルフィッシュが入っていた。超レアな魚をなぜ入れることができたのだろうか。 ドン・…

街なかの弱肉強食

昨日、近所で衝撃的な出来事に遭遇した。 4時少し前、横網町公園に差し掛かかると、けたたましい鳥の鳴き声。木の葉で見えないが、10羽くらいだろうか。ヒヨドリの声より大きい。威嚇の声だと直感。周囲を見ると案の定、1羽のカラスがいた。縄張りから追い出…

写真集制作で不思議な巡り合わせ

(株)岩崎書店から出版予定の写真集『サンゴ礁の海 生きるための知恵くらべ』。新型コロナによる影響などで出版が遅れているが、予期せぬ出来事も重なって印刷会社を替えることになり、さらに遅れることに。 写真集『サンゴ礁の海 生きるための知恵くらべ』…

ワニゴチとエンマゴチ

コチ科にワニゴチという種がいる。全長60cmに達し、砂底やガレ場に生息する。1991年春にパラオでワニゴチを撮影し、その年に出した写真集『Marine Blue』にその写真も載せた。 写真集とワニゴチとして載せたページ(パラオ) その後コチ類の研究が進み、90年…

アカネハナゴイについて

アカネハナゴイはハタ科ナガハナダイ属で、全長約8cmになる。口先が尖っていて、オスは背ビレが赤いことと腹ビレが長いことが特徴。メスはオスよりやや小さく、背ビレや腹ビレにオスの特徴はない。主にサンゴ礁に生息し、キンギョハナダイと混泳することもよ…

涼し気な写真

残暑が続いている。8月28日の予想最高気温は、東京35℃、那覇32℃、札幌33℃だ。札幌より那覇のほうが低いとは、一体どういうことか。そこで、沖縄・座間味で撮った涼し気な写真をお届けしよう。 バブルが全盛だったころ、旅行会社や航空会社が競ってダイビング…

釣りの人気魚・イシダイ

磯釣りの対象魚で一番人気はイシダイだろう。スズキ目イシダイ科で、大きさは最大で約80cmにもなる。日本各地、朝鮮半島南部、中国沿岸に分布するが、温かい水は苦手のようで、琉球列島では極端に少ない。 約30cmのイシダイ(柏島) イシダイの幼魚は流れ藻…

コロナ禍でのMDフェア 

新型コロナウィルスの影響で、多くのイベントが中止や延期を余儀なくされている。毎年4月第一週に開催されていた「マリンダイビングフェア」も二度の延期の末、ようやく開催された。 マリンダイビングフェアのポスター もちろん、入場に関しての感染予防対策…

リボンゴビーについて

28年前、海外の図鑑で「リボンゴビー」という不思議な魚を知った。1992年発刊された図鑑で、著者はオーストラリアの水中写真家兼研究者のルディー・クーター氏。インドネシアとその周辺の海水魚を余すところなく収録している。それにはブルーバード・リボン…

海の戦跡から回顧する

終戦から75年。多くが戦争を知らない世代になった。疎開して防空壕を体験、東京大空襲で生家を焼失した者としては、戦争の悲惨さを伝える義務がある。といっても大袈裟なことではなく、海で見た戦跡を取り上げて回顧してみたい。 太平洋戦争初期、日本軍は東…

タイマイは食いしん坊

サンゴ礁の海で出会うウミガメは、大部分がアオウミガメとタイマイだ。タイマイは顔が細くて口先が尖っていること、甲羅の縁の後方がギザギザになっているのが特徴。甲羅はべっ甲細工として櫛や帯留め、メガネの縁などに利用されたため、乱獲されて絶滅危惧…

8月9日は「ダーウィン祭り」

2018年秋に奄美で長期取材したNHK「ダーウィンが来た!生きもの新伝説 ひっつかない!コバンザメ謎の大集結」の放送が、いよいよ9日になった。 また、2017年11月に放送した「ダーウィンが来た! 生きもの新伝説 大人気! チンアナゴの珍生活」が、同日朝、NH…

今朝の「さわやか自然百景」はマニアック

毎週日曜日の朝放送のNHK「さわやか自然百景」。15分の短い番組なのだが、かなり時間をかけて取材している。制作(撮影)はNHK以外に外部の制作プロダクション数社も担当している。それぞれ特徴があり、水中シーンが多いときはだいたい「日本水中映像」だ。…

世界的にサメが減少

ナショナルジオグラフィックのメールマガジンに、サメの調査の記事が載っていた。海洋生物の世界的研究機関が世界58か国、37か所のサンゴ礁でサメの調査を実施。これほど大規模な調査は初だという。 カリブ海での調査の様子(ナショジオのメールマガジンより…

タツノオトシゴ養殖事業化

タツノオトシゴ科は尾ビレがなく、尾部で海藻やヤギ類に巻き付くことができることが特徴。タツノオトシゴは、昔から主に中国で漢方薬(強壮剤)として利用されてきた。そのため、乱獲や生息海域の環境悪化などで絶滅危惧種になっている。 タツノオトシゴ科の…

ギチベラの生態

先日「ワイルドライフ」の奄美ロケをしたとき、ギチベラが連日産卵していた。以前からギチベラの繁殖行動は何度も見ていたが、今回はさらにじっくり観察したので、取り上げてみたい。 ギチベラのオス。このような派手な体色は繁殖期のみ(座間味) ギチベラ…

脅かしているつもりが…

魚の中には胸ビレが大きなものもいる。ふだんはたたんでいるが、広げると巨大になる。ホウボウやセミホウボウ、オコゼなどがこのような特徴を持つ魚で、ヒレを広げるのは威嚇の意味がある。 ホウボウは約40cmに達し、北海道南部以南~南シナ海に分布し、砂泥…

最近届いた本

奄美から帰ったら本が3冊届いていた。そういえばこの時期に出版されると聞いていたものだ。1冊目は講談社の魚類図鑑で、8年くらい前に発刊された『MOVE 魚 』の小型版『MOVEmini 魚』。DVDはついていない代わりに、QRコードを読み込むとデジタル図鑑が見られ…

奄美「ワイルドライフ」ロケ(2)

今年はやはり異常のようで、いつもいる魚が見えない。アマミホシゾラフグも嘉鉄ではまったく見られず、もちろんミステリーサークルもできていない。ただ、しものせき水族館の調査で、清水でようやく見つかった。コバンザメもこの時期はいなくなると地元の人…