大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

暖かいのは苦手・ミナミゴンべ

ゴンべ科オキゴンべ属のミナミゴンべは全長約12cmに達し、相模湾以南の西部太平洋に分布している。赤茶系の斑紋が全身に入り、目の後ろに目玉模様がある。斑紋の色や形は、個体によって多少異なる。

ミナゴンべ(三宅島)

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80年代初めごろ、沖縄の慶良間諸島でミナミゴンべを何度か撮影した。しかし、よく見たら尾ビレに赤っぽい斑点がある。ミナミゴンべには入っていないので、不思議に思っていた。その後別種とわかり、93年にヒメゴンべという和名が付いた。

上はミナミゴンべ(奄美)で、下がヒメゴンべ(座間味)

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ミナミゴンべはずいぶん前からヒメゴンべと混同されていたようだ。ミナミゴンべが日本初記録になったときの命名は推測だが、温帯種のオキゴンべよりも南方に分布するので「ミナミ」となったのだろう。当初座間味でミナミゴンべだと思っていたのは、ほとんどヒメゴンべだった。ミナミゴンべは暖かい水が苦手なのだろう。奄美では水深24m付近に生息するが、冬以外は見られないので、深みに移動するのかもしれない。

2月に水深24mで撮ったミナミゴンべ。水温は21℃(奄美

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ところが、インドネシアのコモド諸島で何度もミナミゴンべに出会った。当初は近似種だと思っていたが、確かにミナミゴンべなのだ。また、オーストラリアのサンゴ礁全域でミナミゴンべが分布しているという。どちらも沖縄より赤道に近いのに、どうしてなのだろうか。

ミナミゴンべのペア(コモド)

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コモド諸島で本種が生息するのは南エリアのみ。南エリアには冷たい湧昇流が入ってくる。ゆえに水温は23℃前後。28℃前後の北エリアよりかなり低い。だからミナミゴンべも生息できるのだろう。一方オーストラリアの場合は、生息水深が40mくらいとのこと。水温は低めなのだろう。どこのミナミゴンべも暖かいのは苦手のようだ。

ヤギ類の先端で見張り(?)をするミナミゴンべ(コモド)

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