大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ミジンベニハゼ属について

ハゼ科ミジンベニハゼ属は世界に7種、日本に3種(ミジンベニハゼ、ナカモトイロワケハゼ、イレズミミジンベニハゼ)分布している。いずれも全長約2~3cmと小さい。同属は内湾の砂地に生息することが特徴で、産卵には空缶や空瓶、貝殻などを利用する傾向がある。

ミジンベニハゼは、1915年に長崎魚市場から得られた標本を基に、高知県出身で日本の魚類分類学創始者・田中茂穂博士が新種記載した。2000年ごろまでは日本固有種だったが、現在の分布は千葉県以南の西部太平洋となっている。

全身黄色のミジンベニハゼ(奄美

 

ナカモトイロワケハゼは、石垣島から得られた標本を基に、2001年ジョン E・ランドール博士と瀬能宏博士により新種記載された。「ナカモト」は発見者の中本氏(石垣島でダイビングサービス経営)にちなむ。現在の分布は沖縄本島慶良間諸島石垣島インドネシアパプアニューギニアで、生息水深は35m以深といわれているが、慶良間諸島の座間味では25mだった。

貝殻に住むナカモトイロワケハゼ(座間味)

 

イレズミミジンベニハゼは、1966年に新種記載された。日本で生息が確認されたのは1990年代後半。奄美や沖縄でマニアックなダイバーに撮影された。正式に日本初記録種になったのは2001年で、和名が付けられた。ミジンベニハゼに似るが、顔に放射状の線が入っているのが特徴だ。本種も生息水深は深いほうだが、奄美では比較的浅い。

イレズミミジンベニハゼ(奄美14m

 

奄美ではイレズミミジンベニハゼを何度も見て撮影しているが、顔にある放射状の線が薄い個体も見受けられる。ミジンベニハゼとの雑種だろうか。

放射状の線が極端に薄い個体(奄美24m

 

インドネシアのレンべで出会ったイレズミミジンベニハゼは、オレンジ色だった。はたして色彩変異なのか、別種なのか気になるところだが、手元にある海外の図鑑には載っていない。ミジンベニハゼも奥が深い。

オレンジタイプのイレズミミジンベニハゼ(レンべ)