大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

最新ハゼ図鑑

2004年に発刊された『決定版 日本のハゼ』(平凡社)の新訂・増補版『新版 日本のハゼ』が、今月上旬刊行された。著者の一人でもある、写真担当の矢野維幾氏より贈られてきた。初版から16年、研究の進歩により新種や日本初記録種が増え、収録総数は470種から534種になった。

旧版(左)と『新版 日本のハゼ』

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手元に写真があるものについて、新たに名前が付いたり代わったりしたものを取り上げてみよう。旧版ではクロユリハゼ属の1種だった2種のうち1種が、2012年に新種記載されてスミゾメハナハゼと和名が付いた。もう1種はリュウキュウハナハゼという和名が付いたが、学名はまだ付けられていない。

上はリュウキュウハナハゼ、下はスミゾメハナハゼ(奄美

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ヤツシハゼは和名が付いていたものの、旧版のときには未記載種だった。2007年に新種記載され、新版では種小名が付けられた。

ヤツシハゼ(西表島

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旧版ではホムラハゼ属の1種だったが、2012年に新種記載され、ナギナタハゼという和名が付けられた。新版では種小名、和名ともに背ビレの特徴にちなんで付けられたと記されている。

ナギナタハゼ(柏島

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旧版のときにはホタテツノハゼ属の1種だったが、新版ではオニハゼ属の1種に変更になった。

ホタテツノハゼ属改めオニハゼ属の1種(柏島

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旧版ではクロユリハゼ科の1種だったが、2009年に新属新種として記載され、カグヤハゼ属で和名はモモイロカグヤハゼと付けられた。

モモイロカグヤハゼ(錦江湾

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旧版のときはコバンハゼ属の1種だったが、2005年新種記載され、新版ではアワイロコバンハゼの和名が付けられた。

アワイロコバンハゼ(座間味)

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新旧どちらの『日本のハゼ』で見ても、イレズミミジンベニハゼの顔の放射状模様は淡い水色なのだが、奄美で撮影したイレズミミジンベニハゼは濃い茶色。はたして別種なのだろうか。

イレズミミジンベニハゼ?(奄美

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変更しなかったものもあった。イトヒキハゼ属の1種で、砂泥底に生息する共生ハゼ。進展があるものと期待していたが、同じだった。分布は奄美大島、沖縄島、西表島などの内湾。

イトヒキハゼ属の1種(奄美

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