大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ハナハゼ物語

ハナハゼを最初に見たのは1968年ごろの真鶴。姿も泳ぎ方も優雅ですっかり魅了されたのだが、近寄ると巣穴に隠れてしまうのが難点だった。新種記載は海外の学者によって1909年に行われた。和名(種小名も)の由来は、明治時代の日本の海洋動物学者の娘「ハナ」への献名とか。
優雅に泳ぐハナハゼ(1990年、大瀬崎)

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当初はハゼ科だったが、その後クロユリハゼ科に替わり、現在はオオメワラスボ科とする学者もいて見解が分かれている。海底より1mくらい上を浮遊し、危険が迫るとダテハゼなどの巣穴に隠れる。そのため居候といわれるが、実際はハナハゼが巣穴に近寄れば外敵が来る合図なので、一番目の見張り役といっていい。
ダテハゼの巣穴から出るハナハゼ(1990年、大瀬崎)

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実はハナハゼの琉球列島タイプというのが知られていた。80年代初めごろに沖縄・座間味島で撮影しているが。尾ビレの糸状のヒレが2本しかない。
琉球列島タイプのハナハゼ(1983年、座間味島

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その後研究が進み、琉球列島タイプは別種であることが判明し、2012年にリュウキュウハナハゼと命名された。しかしまだ学名は付いていないので新種なのだろう。
リュウキュウハナハゼ(2010年、奄美

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90年代初めごろ、尾ビレの糸状がまったくないタイプも現れた。体側中央付近から尾ビレにかけて暗色の帯がある。沖縄本島の本部で観察・撮影して驚いた覚えがある。というのも、通称はあるものの未記載種2種とまだ和名が付いてないテッポウエビなどと一緒にいたからだ。当時このハナハゼ(?)は、オグロクロユリハゼのバリエーションと考えられていた。
ヤシャハゼとヤノダテハゼのそばに(1993年、沖縄本島

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これも研究の結果新種と判明し、2012年に新種記載されて和名はスミゾメハナハゼとなった。
ヤシャハゼとスミゾメハナハゼ(2009年、奄美

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