ハゼ科のオドリハゼは、テッポウエビ類と同じ巣穴で暮らす、いわゆる「共生ハゼ」。全長約4cmで、白黒の体色。巣穴の上で胸ビレを振りながらホバリングするしぐさが和名の由来で、英名もダンスシュリンプゴビー。
オドリハゼ(奄美)
新種記載されたのは1960年で、紅海産の標本が基になったらしい。
オドリハゼ(座間味)
'80年代初めに座間味島で故益田一氏と潜ったとき、ロッテリアがいた、と益田氏が言った。オドリハゼのことなのだが、まだ日本では分布が確認されておらず、和名もなく知らなかったので、どんな魚でどんな環境にいるのかお聞きし、撮影した。
学名の属名はLotiliaなので、ファストフードの店名になぞってそう言ったようだ。その後、'83年ごろに和名が付いた。
オドリハゼは警戒心が強く、接近しすぎると巣穴から出てこない。共生相手のテッポウエビは働きものなので懸命に砂を外に運ぶ。その際、オドリハゼごと押し出すこともある。このテッポウエビは赤紫の斑点があって独特。和名がなかったのでダンスゴビーシュリンプと呼ばれていたが、約5年前にブドウテッポウエビという和名が付いた。
石垣のオドリハゼと枠内は紅海のもの
オドリハゼの第1背ビレには目玉模様が入っているが、紅海産と西太平洋産では目玉模様のタイプが異なるため、精査が必要とされていた。その結果、'12年に西太平洋産は別種になり、学名がL.klausewitziに変わった。つまり新種記載されたのだ。種小名は紅海産を新種記載した命名者の名になっている。
大きさがこんなに違う(奄美)
オドリハゼの共生相手は必ずブドウテッポウエビだ。ブドウテッポウエビもオドリハゼとしか共生しないと思っていた。沖縄や奄美では必ずそうだからだ。ところが、調べてみたら屋久島や柏島ではシロオビハゼとも共生していることがわかった。オドリハゼ一途ではなかったのだ。