「共生エビ」と呼ばれるテッポウエビ類は、日本に17種いる。この中でコトブキテッポウエビの美しさは別格。紅白模様で大きさは約3cm。相模湾以南の西部太平洋、インド洋に分布している。新種記載されたのは1980年。このエビを初めて知ったのは観賞魚雑誌『フィッシュマガジン』で80年代初め。ヤシャハゼと共生している写真を見て、同じ色彩パターンに感動した。撮影は武内宏司氏で、座間味で撮ったようだ。当時はどちらも和名が付いていなかった。
色彩パターンが同じヤシャハゼとコトブキテッポウエビ(座間味)
85年に座間味でヤシャハゼを初めて撮った。そのときの共生相手が後のコトブキテッポウエビで、当時は種小名から「ランドールズピストルシュリンプ」と英名で呼ばれていた。その後、いろいろな海でこのエビを撮る機会が増えてきたが、テッポウエビ類の中ではパートナーの選択肢が広いことがわかった。ヤシャハゼ、ヒレナガネジリンボウ、ヤノダテハゼ、ホタテツノハゼ、キツネメネジリンボウの5種だ。
コトブキテッポウエビと主なパートナー
その他にもネジリンボウと共生することもあるが、海域によって異なり、半々という感じ。東伊豆・富戸と柏島のネジリンボウはコトブキテッポウエビだが、西伊豆・大瀬崎と鹿児島・錦江湾のネジリンボウはニシキテッポウエビと共生している。
ネジリンボウ。左が柏島で右が錦江湾。錦江湾はニシキテッポウエビ
ごくまれにヒメダテハゼやオニハゼ、あるいはオニハゼ属の1種などと一緒の場合がある。前2種は他のテッポウエビと共生していることが多いので、間違えた可能性が高い。オニハゼ属の1種はデータが極端に少ないので、本当のパートナーなのかは確定できない。
ハゼもテッポウエビも卵からふ化すると浮遊生活を送るので、着底したときに両種が出会う確率はとても低いはずだ。互いに引き寄せ合うフェロモンを分泌して出会うのだろうが、狭い範囲ならまだしも、極端に遠く離れた海域でも両種が共生しているのも事実。一体どのようにして出会ったのだろうか。
ランドールピストルシュリンプは、2003年に串本海中公園センターの野村恵一氏により、和名が付けられた。
ヤシャハゼと。遠く離れてもパートナーは同じ(伊豆大島)