大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ダテハゼについて

ハゼ科のダテハゼは全長約12cm で、千葉県以南~屋久島、香港に分布している。沿岸の砂底にテッポウエビ類と同じ巣穴で暮らし、巣穴の修繕などはテッポウエビの役目で、ダテハゼは見張り役。したがって、テッポウエビが巣穴から出るときには、ヒゲはハゼの体から離れない。

ダテハゼのペアと共生するテッポウエビ伊豆大島

 

ダテハゼは温帯域で見られる共生ハゼの中ではごく普通種。今回改めて調べたら、日本で発見され、ほぼ固有種ということがわかった。新種記載されたのは1957年で、鹿児島県の錦江湾から得られた標本が基になっている。最近まで分布は日本のみで固有種だったが、2021年発刊の新版『日本のハゼ』(平凡社)で香港が加わり、固有種ではなくなった。

ダテハゼとニシキテッポウエビ錦江湾

 

ダテハゼの共生相手はほとんどがニシキテッポウエビだが、ごくまれに違う場合がある。大瀬崎で撮影していたとき、違う種のテッポウエビだったことがあった。そのときは何とも思わなかったが、後になって珍しいと気づき、調べたら和名が付いていない種で、通称ア-マーシュリンプだった。

共生エビがニシキテッポウエビではない珍しいケース(大瀬崎)

 

ダテハゼとテッポウエビが暮らす巣穴には、危険を察知したハナハゼが逃げ込むことがある。ダテハゼが嫌がるという話を聞いたことがあるが、自分が見た限りではそういうことはなかった。

ダテハゼの巣穴に逃げ込んでいたハナハゼが出てきた(大瀬崎)

 

ダテハゼの繁殖期は初夏~夏。ペアでいる場合はさほど変わったことはないが、単独オスがペアに近づく場合は大いにもめる。ペアのオスは当然追い払う行動を示す。ヒレを広げて体を大きく見せたり、口を開けて吠えるようなしぐさをして、何とか追い払おうとする。侵入オスも簡単には引き下がらない。しばらく攻防が続いた後、侵入オスはあきらめて遠ざかった。産卵は巣穴で行われるため、その様子や卵が見られないのは残念でもある。

侵入オスに対して大きく見せて追い払うオス(柏島