ハゼ科のホタテツノハゼが新種になった。といっても1年前の話だが…。
オーストラリアのアレン博士らが記載し、学名は Tomiyamichthys emilyae と付けられた。そもそもホタテツノハゼは、約40年前に和歌山県田辺湾の水深14mの砂底より1個体だけ採集された。84年発刊の『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)に掲載され、学名はなしで標準和名ホタテツノハゼが付けられた。標本のサイズは2.3cmなので成魚ではないようだ。実際に海でホタテツノハゼを見たのは座間味で、87年10月のこと。写真は撮れなかった。それから4年後、柏島で初めて撮影できた。
ホタテツノハゼのペア(91年7月、柏島)
その後奄美の黒崎というポイントに生息していることがわかり、何度も撮影した。あるときペアが巣穴から出て小競り合いをしていた。片方は体色を変えていて、求愛なのか喧嘩なのかわからないまま撮影した。
体色を変えて小競り合い(06年6月、奄美)
また、顔を白くすることがあることもわかった。しつこく撮影していると怒るらしい。
顔を白くして怒ることも(06年10月、奄美)
座間味ではお花畑というポイントで見られる。あるとき、巣穴からかなり出ている個体を見つけた。エサを探しているらしかったが、どうも様子が変だ。巣穴から1m近くも離れた石があるところに行き、石に乗った。腹部を石にあてて気持ちよさそうにしている。意味は不明だが、1分近くそうしていた。
石に乗って気持ちよさそう(09年1月、座間味)
ホタテツノハゼは共生ハゼで、ほとんどはコトブキテッポウエビと住んでいる。エビの触覚を常に体に触れて危険を知らせるのだが、安心しきったときはそうとも限らない。自分の背ビレも警戒しているときは広げるが、安心しているときは倒す。
いろいろな生態を見せてくれるホタテツノハゼ。日本で発見されたにもかかわらず、新種記載したのが日本人学者ではないのがちょっと残念でもある。
安心しきっているときのホタテツノハゼ’(09年8月、奄美)