魚を撮影するときは適度に近寄り、最もよいと思う体勢・表情を狙うことにしている。その魚の特徴を引き出すことがポイントになる。そうするためには、魚との駆け引きが必須なのだが、特にクロユリハゼの仲間の場合、ギリギリのせめぎ合いがとても楽しいのだ。
クロユリハゼの仲間は分類上難しいようで、一時期クロユリハゼ科だったことがあるが、現在はハゼ科に戻った。それはさておき、クロユリハゼの仲間は海底の少し上を遊泳していて、近寄ると海底の隙間に身を隠す。行動域に隠れ場所を把握しているみたいなのだ。イトマンクロユリハゼは、小さなグループで群がっている。近寄るとみんなが隠れ場所に向かってゆっくり移動する。さらに近寄ると、こちらの様子を見ながら隠れ場所に入る体勢をとる。
ギリギリのところで撮ったイトマンクロユリハゼ(08年、奄美)
欲を出してさらに近寄ると群れが乱れたり、数尾が隠れ場所に姿を隠したりしてしまう。
群れが乱れた(08年、奄美)
写真を整理していたら、昔撮ったイトマンクロユリハゼが出てきた。1984年座間味で撮影したものだ。上の写真とそっくりなので少々びっくりしている。撮影技術が進歩していないという見方もできるが、イトマンクロユリハゼの習性や行動がどこに住もうと同じということなのだろう。
クロユリハゼの仲間の中でハナハゼ類は、危険を察知すると共生ハゼの巣穴に逃げ込む。ハチマキダテハゼのそばにいたスミゾメハナハゼを撮ろうと近づいたら、しだいに巣穴に近寄った。これ以上寄ったら入り込んでしまう、というギリギリの状態を見極めるのがとても楽しい。気軽に「駆け引き」ができる日が早く来てほしいものだ。
スミゾメハナハゼとハチマキダテハゼ(リロアン)