コチ科にワニゴチという種がいる。全長60cmに達し、砂底やガレ場に生息する。1991年春にパラオでワニゴチを撮影し、その年に出した写真集『Marine Blue』にその写真も載せた。
写真集とワニゴチとして載せたページ(パラオ)
その後コチ類の研究が進み、90年代中ごろワニゴチが2種に分けられ、エンマゴチが誕生した。それまで日本では、2種が混同されていたのだ。エンマゴチは約50cmで、奄美大島以南の西部太平洋に分布。目の上や吻に皮弁が多くあるのが特徴。したがって、パラオで撮影したのはエンマゴチになる。
海底に溶け込む保護色のエンマゴチ(奄美)
ワニゴチもエンマゴチも虹彩皮膜というものがあるのが特徴だ。目をすだれのようなものが覆っていて、カムフラージュ効果があると考えられている。また、砂が付くのを防ぐとも考えられるが、よくわからない。
エンマゴチの虹彩皮膜(マレーシア)
ワニゴチは伊豆半島から九州および南シナ海に分布する。すなわちワニゴチは温帯域、エンマゴチはサンゴ礁域に分布ということになる。観察したところでは、ワニゴチは砂地に多く、エンマゴチは砂地よりもガレ場に多く生息することがわかった。
ガレ場に着底するエンマゴチ(マレーシア)
ワニゴチは、2種に分かれたときから研究者の間では未記載種ではないかと研究が続けられてきた。その結果未記載種であることが判明し、2010年に新種記載された。
新種になったワニゴチ(柏島)
新種になったとはいえ、和名はそのままで、変わったのは学名だけ。
身近な魚でもいろいろ歴史があるものだ。
ワニゴチの顔。わりあいつるっとしている(柏島)