磯釣りの対象魚で一番人気はイシダイだろう。スズキ目イシダイ科で、大きさは最大で約80cmにもなる。日本各地、朝鮮半島南部、中国沿岸に分布するが、温かい水は苦手のようで、琉球列島では極端に少ない。
約30cmのイシダイ(柏島)
イシダイの幼魚は流れ藻に付く習性があり、少し成長すると岩礁域に移る。このころは10尾くらいの群れで過ごすことが多い。また好奇心が強く、ダイバーにつきまとうこともある。エサは流れ藻時代はプランクトンで、岩礁域になると小さな甲殻類に替わる。
イシダイの幼魚(佐渡)
15cmくらいになると貝類、ウニ類、フジツボ類などをエサにする。そのため、これらを噛み砕く頑丈な歯とアゴが備わる。イシダイは人気魚だけに研究もされていて、1歳で15cm、3歳で成魚(30cm)になり、最大で80cmになることがわかっている。
イソギンチャクに興味を持つイシダイ未成魚(大瀬崎)
40cmを超えるころになると警戒心が強くなるため、近づくのが難しくなる。撮影できるのは、30cm以下のものが多い。
約30cmのイシダイ(佐渡)
ところが、東伊豆の初島で大物と出会った。そのときは水がとても濁っていて、突然目の前に現れた。70cmくらいの老成魚だ。老成すると口の周りが黒くなることから「クチグロ」と呼ばれている。また、メスの老成魚は縞模様がうっすら残るが、オスは縞模様が消える。なぜ近寄って来たのだろうか。何度も周囲を行き来したので、濁りのせいではない。幼魚期の好奇心が蘇ったのかもしれない。
70cmもあるオスのクチグロ(初島)