1995年、奄美で見慣れぬフグを撮影した。特徴は背ビレつけ根に目玉模様があること。当時日本の魚類図鑑には載っていなかった。その直後に入手した海外の図鑑(94年発刊)には載っていて、英名はFalse-eye pufferで、学名はCanthigaster papua だった。英名は、ニセの目を持つフグという意味だ。
False-eye puffer( 95年、奄美)
それから2年後、『日本の海水魚』(山と渓谷社)が発行され、そのフグはキタマクラ属の一種として掲載された(撮影地は西表島)。しかし学名はC.solandriで、海外の図鑑とは異なっていた。この当時から研究者によって意見が分かれていたようだ。
キタマクラ属の一種(ラジャアンパット)
その後も奄美では何度も出会って撮影しているが、不思議なことに沖縄では一度も出会っていない。インドネシアのコモド諸島やラジャアンパットでは何度か出会った。海外の図鑑での種小名は「papua」なので、本場のものを見たいと思い、パプアニューギニアに行ったとき懸命に探してようやく撮れた。
本場のpapua(パプアニューギニア)
本種は単独の場合と2尾で行動している場合がある。多少斑紋が異なるので雌雄の違いなのだろうか。マレーシアのポンポン島でペアと思われる2尾に出会ったが、一つの画面に入るほどは接近してはくれなかった。別々に撮って並べたので、比較していただきたい。
斑紋が微妙に違う。雌雄差だろうか(ポンポン島)
本種は05年に日本初記録種として、標準和名アラレキンチャクフグと付けられた。しかし学名はC.solandriだった。C.solandriは大部分が斑点なので、どう見ても違う。「papua」と「solandri」は同種で、斑紋の違いは雌雄差という研究者の結論だったようだ。ところが、17年発刊の『日本産フグ類図鑑』(東海大学出版部)にはC.papua アラレキンチャクフグと学名が改められていた。これでスッキリしたのだが、今回確認のために魚類画像データベースで検索すると、未だにC.solandri だった。最先端であるはずなのだが…入力や訂正はボランティアスタッフが行っているので、しかたがないだろう。
アラレキンチャクフグ(奄美)