大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

イッポンテグリについて

ネズッポ科のイッポンテグリは全長約15cmになり、駿河湾以南の西部太平洋に分布している。成魚が見られるのは奄美以南のようだ。生息地は内湾の砂泥底で、単独でじっとしていることが多い。腹ビレの前方に長いトゲが出ていて、1本の指のように見えることが和名の由来。このトゲでエサを探すと考えられている。底生小動物をエサにしていると思われるが、詳細は不明。

イッポンテグリの成魚(奄美)

 

幼魚は体が白っぽく、目を通るオレンジの帯がある。背中と背ビレはオレンジと黒の縞のような斑紋が入っている。90年代初めごろは別種と考えられ、海外の図鑑には新種として掲載された。日本でもマクロ派の間でブラックオレンジドラゴネットの名で広まった。しかしその後、本種の幼魚であることが判明した。

4cmのイッポンテグリの幼魚(リロアン)

 

イッポンテグリの生活史はわかっていないらしい。成長するにしたがい、体色が茶色っぽく、複雑な模様も表われ、保護色になる。第1背ビレが棒状なのはメス。これが和名の由来かと思っていたが、違っていた。

イッポンテグリのメス(リロアン)

 

一方オスは、第1背ビレが扇のように広がっていて細長いトゲが伸びている。また、前方に青い斑紋がある。これまでイッポンテグリは78個体しか出会っていないので情報量は少ないが、オスの背ビレをした小型個体は見ていない。性転換を行う種ならわかるが、本種は行わないらしい。オスとして成熟した個体だけ背ビレが変化するのだろうか。そういう意味では、奄美で撮った個体が変化中に見える。

イッポンテグリのオス(レンべ)

 

第1背ビレのことが気になったので、魚類写真資料データベースを見た。約60点のうち大半がメスと幼魚だった。やはりオスは少ないうえ、小型のオスは見当たらなかった。ただ、第1背ビレがオスとメスの中間のような個体もいたので、〝二次性徴〟(成熟に伴って現われる雌雄の形態的特徴)なのだろう。未知の部分が明らかになるよう、研究が進むことを願っている。

イッポンテグリのメス(レンべ)