大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ハチマキダテハゼの繁殖生態

ハゼ科のハチマキダテハゼは全長約8cmになり、相模湾以南の西部太平洋、インド洋に分布している。砂底でテッポウエビ類と共生する、いわゆる〝共生ハゼ〟だ。ダテハゼに似ているが、目の後方に褐色の細い線、そして頭に輪の模様があるのが特徴。新種記載されたのは1979年で、日本での生息は80年代中ごろに確認され、頭の輪にちなんで和名が付けられた。

ニシキテッポウエビと共生するハチマキダテハゼ(奄美

 

本種は奄美に比較的多く、共生相手はほとんどがニシキテッポウエビ。また、図鑑では単独で生息すると書かれているが、奄美ではペアでいる確率もわりあい高いので、〝単独〟というのが引っかかる。

共生ハゼの繁殖生態はあまり研究が進んでいないと思われるが、3つのパターンが推測される。①恒常的なペアが永続し、繁殖期に数回繁殖行動する ②単独で暮らし、繁殖期にメスがオスの巣穴に来て産卵し、すぐに引き返す ③単独で暮らし、繁殖期にペアになって数回繁殖し、時期が終わるとペアを解消する。

ハチマキダテハゼのペア(奄美

 

本種がペアで巣穴の外にいるときは、①か➂のパターンで、産卵前と考えてよさそうだ。卵があるなら、オスが世話をするはずだから…。②のパターンは、どちらも複数の異性と繁殖するものと思われる。〝単独〟がミソで、子孫を多く残す種の仕組みとして、遺伝子に組み込まれているのだろう。

初夏に出会ったハチマキダテハゼのペア。たぶん手前がオス(奄美

 

撮影後も観察を続けていたら、オスが向きを変え、メスに顔を近づけた。頭の周辺には水色の斑点が表れている。単独のときにはないので、婚姻色なのだろう。腹ビレや尻ビレも鮮やかな模様になっている。このシーンを見て、本種の繁殖行動は➂のパターンだと確信したのだった。

顔を近づけて求愛(?)するオス(奄美