大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

懐かしのフィールド図鑑

先週開催された「あでやっこ水中写真展」の会場は〝こうべまちづくり会館〟の地下で、1階は古本を売っている店だった。どんなものがあるのか見たら、なんと「フィールド図鑑 造礁サンゴ」があった(値段は600円)。198812月に東海大学出版会から刊行され、表紙や裏表紙、口絵などの写真を提供したのでよく覚えている。

「フィールド図鑑 造礁サンゴ」の表紙と裏表紙

 

「フィールド図鑑」はシリーズ化され、1984年の「フィールド図鑑 海水魚」が第1弾。当時、ダイビングの目的が生物観察・撮影が主流になりつつあったので、東海大学出版会と益田海洋プロダクションが手を組み、海に持参できるハンディタイプの図鑑を制作することになったのだ。「海水魚」に続き「海岸動物」「貝類」「フィッシュウォッチング」そして「造礁サンゴ」でシリーズは終了した。

「フィールド図鑑」シリーズ

 

「造礁サンゴ」出版の数か月前、出版社の編集者から写真をお願いされた。著者は当時サンゴの研究では第一人者の西平守孝先生で、写真はアップしかないため、サンゴ礁の風景写真がほしい、とのことだった。

シリーズの第4弾までは、写真を揃えるのは益田海洋プロダクションだったが、第5弾は著者の写真のみだったため、声をかけてくれたようで、とてもうれしかったのを今でも覚えている。

ちなみに表紙の写真は1987年夏に座間味島の北側「ニタ」で撮った。冬には季節風が吹いて波が荒い日が続くため、枝状サンゴは育たないうえ、テーブル状サンゴも根元が折れないように背が低くなる。当時はオニヒトデの食害の影響がまだ残っていて理想的なサンゴ礁は見られなかったため、この写真にした。

座間味島・ニタのサンゴ礁

 

裏表紙は、ハナガサミドリイシネッタイスズメダイ幼魚で、これも座間味で撮った。当時は魚類をメインに撮っていたが、アップばかりではなく、どんな環境に住んでいるかがわかるように、周囲の状況も一緒に写し込むように心がけていた。

古本屋さんに「造礁サンゴ」があったことをあでやっこメンバーに話すのを忘れてしまった。売れてほしいという気持ちがある反面、来年まで売れ残っていて実物をメンバーに見てもらい、そしてお買い上げいただく、というのが最良のシナリオかもしれない。

裏表紙に使用した続きのカット。ハナガサミドリイシネッタイスズメダイ幼魚