ハゼ科のフタホシタカノハハゼは、奄美大島以南の西部太平洋、インド洋に分布し、内湾の砂泥底にテッポウエビ類と共生している。全長約8cmで、焦げ茶色の不規則な斑紋が全体に広がり、頬に細長くて黒い斑紋二つあるのが和名の由来。日本に生息が確認されたのは1990年ごろで、当初は未記載種扱いだった。約30年後、既存種(1932年に新種記載)と同じと判明した、と2021年に出版された『新版 日本のハゼ』(平凡社)に記されている。
基本の体色(?)のフタホシタカノハハゼ(タイ・タオ島)
焦げ茶色の斑紋があるタイプが基本のようなのだが、全身が黄色いタイプ(黄化個体)もけっこう多い。顔の周辺に水色の斑点はそのままのため、ギンガハゼと混同しやすい。しかも黄色タイプは頬の黒い斑紋が消えている場合が多いので、なおさら見分けにくい。識別点は、本種の腹ビレに縞模様があるがギンガハゼにはない。また、第一背ビレが本種は角ばっているのに対し、ギンガハゼは丸みがある。
黄色いタイプのフタホシタカノハハゼ(タイ・タオ島)
これまで焦げ茶色の斑紋の基本の個体を見たのは2~3度で、大部分は黄色いタイプ。黄化個体で知られるヘラヤガラ、マルクチヒメジ、ギンガハゼなどは半々くらいの割合だが、本種は8割くらいが黄色タイプだ。一体どうしてなのだろう。
黄色いタイプのフタホシタカノハハゼ(奄美)
東部インド洋のスミラン諸島では、中間タイプの個体がいた。これを見ると、同一個体が体色を自在に変えられる可能性がある。とすると、黄色でいたほうがメリットがあるに違いない。
中間の体色をしたフタホシタカノハハゼ(タイ・スミラン諸島)
本種が巣穴から姿を出している場合、すべて単独だった。おそらく繁殖期になるとペアになって産卵し、すぐに離れるということだろう。そうすると、黄色はパートナーを引きつける意味があるのかもしれない。今後の研究を待ちたい。
テッポウエビと暮らすフタホシタカノハハゼ(ラジャアンパット)