ハタ科ナガハナダイ属のハナゴイは、赤紫色をした美しい魚。オスは全長約12cmになり、背ビレが大きく、赤い斑紋が入っているが、個体によって斑紋の大きさが違ったり、まったくないものいる。メスはひと回り小型で、背ビレも小さく赤い斑紋もない。相模湾以南の西・中央太平洋に分布しているが、本州での記録はおそらく幼魚。成魚が普通に見られるのは奄美、沖縄、小笠原などのサンゴ礁だ。
ハナゴイの群れ(奄美)
以前から図鑑などに記されているハナゴイの分布に疑問を持っていた。というのも、海外ではハナゴイを見た覚えがなく、近似種のパープルビューティーばかりだったからだ。ハナゴイの特徴は、上唇が尖っていて、顔の下側は白いことで、パープルビューティーのそれは黄色っぽい。
ハナゴイのオス(座間味)
分布に関して改めて調べてみた。国立科学博物館と神奈川県立生命の星・地球博物館共同の「魚類写真資料データベース」でハナゴイを検索。107点の撮影地はほとんど沖縄や小笠原で、海外のものは北マリアナ、パラオ、ニューカレドニア、フィジーの4か所だった。また、手元の海外の図鑑ではオーストラリア北東部、パラオ、グアムではハナゴイとパープルビューティーの両種が生息しているらしいことがわかった。20年前、ニューカレドニアでハナゴイらしきハナダイを撮影した。当時のログブックには「ハナゴイ?」となっていた。でもどうやらハナゴイで正しかったらしい。
ハナゴイのオスと思われる個体(ニューカレドニア)
西部太平洋や中央太平洋に分布していることはわかったが、生息数は多くないうえ、やはりパープルビューティーと混同されているに違いない。また、両種が混泳もしていると解説されている図鑑もあったので、そうなると交雑種の存在も気になる。いずれパープルビューティーも取り上げてみたい。ちなみにパープルビューティーのメスは、背中と尾ビレに黄色い帯が入っている。
ハナゴイのメス(奄美)
ハナゴイはライトの強弱や角度で反射が異なるためか、体色に差異があるかのように写ってしまう。もしかしたら体色を微妙に変えているのかもしれない。また、オスが背ビレを広げることも多いが、他のオスやメスへのアピールで、特にオス同士がすれ違うときに広げる傾向が強い。
オス同士がすれ違うときに背ビレを広げやすい(座間味)