ハゼ科カスリハゼ属のカスリハゼは、全長約7cmで千葉県以南の西部太平洋に分布している。内湾の砂泥底の浅瀬に生息し、テッポウエビ類と一緒に暮らしている。1837年に海外で新種記載され、日本で分布が確認されたのは、1960年代後半と思われる。ダイビングに適さない内湾に生息するため、研究が遅れたようだ。ずんぐりした体型で、口が大きい。体色・斑紋も変異がある。
1990年代後半になって、カスリハゼと少し斑紋が異なる個体がダイバーの間で話題になった。第一背ビレにカギ状の縞模様があるタイプだ。いつしか「シマカスリハゼ」と呼ばれるようになり、図鑑にも学名がないままカスリハゼとして掲載されたこともある。しかしその後、研究の結果、カスリハゼのメスであることが判明した。
かつてシマカスリハゼとされたカスリハゼのメス(リロアン)
ところが、カスリハゼのメスと思われたものの中に、第一背ビレの縞模様が同心円のものもいた。こちらは未記載種ということで、研究が進められている。カスリハゼと未記載種との外見の違いは、シリビレでもわかる。シリビレに入っている1本の暗色帯がほぼ直線ならカスリハゼ。弓なりなら未記載種らしい。
第一背ビレとシリビレから未記載種になる(ラジャアンパット)
カスリハゼか未記載種かわからない場合もある。砂泥底に生息し、巣穴入口でホバリングしたり、テッポウエビが泥をすくい上げるため、濁ってしまうからだ。また、幼魚の場合はまだ斑紋が安定していないため、判断できないこともある。
全長約4cmの幼魚。たぶん未記載種(ラジャアンパット)
奄美の内湾にも「泥系のハゼ」がいる場所があり、何度か潜って撮影したことがある。カスリハゼと思っていた個体だが、今回改めて調べてみたらカスハゼと未記載種の中間に見えた。交雑種という可能性もあり、奥が深いと感じた。
カスリハゼと未記載種の中間の特徴を持つ個体(奄美)