大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

成魚はどこ? センネンダイ

フエダイ科のセンネンダイは全長約70cmになり、和歌山県以南の西部太平洋、インド洋に分布している。白地に赤茶色の独特な縞模様があることから、容易にセンネンダイとわかる。だが、成魚になると消えるようだ。

全長約40cmのセンネンダイの若魚(鹿児島・坊津)

 

幼魚は、縞模様の色が褐色で、小さいほど黒に近い。生息場所は主にウニ類で、トゲの間にいることが多い。やはり外敵から身を守るためだろう。

3cmの幼魚(リロアン)

 

ウニがたくさんいるところにはセンネンダイの幼魚もよく集まるようで、78尾が集中しているところもあった。

大きい個体ほどウニから離れる傾向がある(リロアン)

 

ある程度成長すると、ウニから離れて行動範囲を広げるはずだが、出会う機会はとても少ない。いったいどのようなところで過ごすのだろうか。手元にある魚類図鑑10数冊を調べてみたら、ある傾向が…。海中で撮影されたセンネンダイはすべて幼魚か若魚で、成魚は標本写真だったのだ。おそらく釣りか網で漁獲されたものだろう。つまり、ダイバーが出会えない深さに生息している可能性が高い。

センネンダイの成魚(講談社の「move 魚」より)

 

卵からふ化したセンネンダイの仔魚は浮遊生活を余儀なくされ、無事だったものが着底するウニを探し出すのも奇跡に近く、幸運の持ち主だけが底生生活を始めることができる。そして食性が替わると転石帯などに行動域を広げ、しだいに深いところへ移動していく。これがセンネンダイの生活史と思われる。実際に見られるのは一瞬だが、壮大な一生を送っていることが想像できる。

きれいなウ二の仲間のそばで暮らす約2cmの幼魚(レンべ)