東京はようやく秋らしくなった。〝食欲の秋〟ということで、奄美大島で出会った食欲旺盛な魚を取り上げよう。通常、捕食魚が獲物を捕らえた場合、すぐに岩陰など目につかないところに隠れる。横取りされるのを防ぐためだ。したがって、獲物をくわえている姿は簡単には見られない。
あるとき、若いエソがネズッポの仲間を捕らえた瞬間に出会った。砂地なので隠れる場所はなく、おまけに獲物が大きすぎたため、その場で何度もくわえ直している。頭のほうからでないと逃げられてしまうからだ。そのようなワケで、食べている瞬間が間近で撮れた。
ネズッポの仲間を捕らえたエソ

ゴマモンガラがウニの殻を見つけ、くわえて移動した。追跡すると、岩陰にたどり着いて食べ始めた。殻でも美味しいようで、食べ残すことはなかった。
ウニの殻を食べるゴマモンガラ

ブダイ類は藻食性で、岩肌や死サンゴに付着した藻をはみ取るのだが、岩の表面ごとかじることもよくある。栄養分だけ吸収し、不要なものはフンとして排泄する。
死サンゴをかじるハゲブダイ

ハタ類の多くは魚食性だが、先述した理由で獲物を捕らえた瞬間はそう見られない。しかし、ニジハタは例外で、その場面に出くわすことが多い。理由はわからない。このときも(たぶん)クラカオスズメダイを捕らえたようで、くわえたままサンゴの裏に隠れた。
獲物を捕らえたニジハタ

プランクトン食性の魚もたくさんいるが、エサが極端に小さいため、食べている様子はわかりにくい。ジンベエザメが口を開けている姿ならそれらしく見えるが、そのような場面に出くわすことは少ない。その点、グルクマならよく見られる。水面近くで口を大きく開いて勢いよく進むと、プランクトンが流入する仕組みだ。常にこうしてエサを食べていて、口を閉じている姿はあまり見られない。食欲の秋にピッタリの魚だ。
大きく口を開けてプランクトンを食べるグルクマ
