大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

トマトグループ

クマノミの仲間は世界に26種知られており、日本には6種分布している。体型などを基に、全種を5つのグループに分けることがある。今回はハマクマノミのグループを見てみよう。学者は「レッドサドルバックグループ」といっているが、ここでは簡単に「トマトグループ」にする。ハマクマノミの英名がトマトアネモネフィッシュだからだ。

ハマクマノミ奄美以南、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシアなどに分布している。タマイタダキイソギンチャクに住む。幼魚は白線が3本あるが、成長と共に2本は消失する。また、老成すると黒の範囲が広がる。条件によっては群生する。

群生するハマクマノミ(フィリピン・セブ島

 

トマトグループにはハマクマノミ、レッドサドルバックアネモネフィッシュ、レッド&ブラックアネモフィッシュ、オーストラリアンアネモネフィッシュ、マックローキーズアネモネフィッシュの5種がいる。レッドサドルバックマレー半島スマトラ島などを中心に分布している。赤い体で後部に黒い斑紋が入り、白い帯はないのが特徴。

レッドサドルバックアネモネフィッシュ(アンダマン海・タイ)

 

レッド&ブラックはハマクマノミとよく似ているが、黒の入り方が少し異なる。当グループでは分布が最も広く、北はミクロネシア、西はボルネオ島、東はポリネシア、南はニューカレドニアになる。

一般的なレッドサドルバック(オーストラリア・グレートバリアリーフ

 

本種は分布が広いため、バリエーションも豊富。地域変異なのだろう。黒斑が小さいものやないものもいる。

レッドサドルバック(左はニューカレドニア、右はフィジー

 

当グループで異彩を放つのがマックローキーズだ。ハマクマノミのブラック版といえる。分布がオーストラリア東部沖のロードハウ島とノーフォーク島に限定される。

トマトグループは、もともと同種だったと推定できる。長い年月をかけて各地に分散し、環境に対応しながら分化したのだろう。この先も分化は続くに違いない。

マックローキーズアネモネフィッシュ(ロードハウ島)