大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

クマノミ類とクリーナー

昔からクリーニングという生態に魅せられ、撮影してきた。沖縄ではクマノミ類の生態も撮り始めたが、クマノミ類がクリーニングされる場面はなかった。寄生虫が付かないからだ、と自分なりに思っていた。理由は、イソギンチャクに触れるうえ、刺胞毒を通さない粘液で体が覆われているからだ。したがって、一般のクリーナーは危険を冒してまで来ない。一度だけクマノミが浮いたときにホンソメワケベラが接近したが、つつくことなく去ってしまった。

クマノミとホンソメワケベラ(座間味)

 

クマノミ類が住むイソギンチャクには、カクレエビの仲間がいることが多い。クリーニングを行う小さなエビで、イソギンチャクのそばに来た魚に付く姿を何度も見ている。クマノミ類は動き回るためエビはなかなか付かないのだが、一度付きかかった場面を見たので粘ってみた。そして、初めてトウアカクマノミに付いたところを撮影できた。

トウアカクマノミカクレエビ(座間味)

 

その後、奄美のあるポイントで、ジュズダマイソギンチャクに住むクマノミカクレエビを見つけた。やはりさまざまな魚がクリーニングされに来る。クマノミにもすると考え、粘っていたら撮れた。

クマノミカクレエビ奄美

 

では、寄生虫がいないはずのクマノミ類にカクレエビがなぜ付くのか。おそらく口の中の食べ残しが目当てなのだろう。そしてもう一つが「接触刺激」ではないだろうか。「接触刺激」とは、魚類学者の桑村哲生氏が著書の中で書かれていて、クリーナーに体を触れられると心地よくなり、癒し効果がある事象のこと。確かに、クリーニングを終えた魚が再び要求したりすることがよくある。マッサージや指圧に通ずるものがあるのかもしれない。

ナデシコカクレエビハナビラクマノミ(コモド)

 

カクレエビの仲間は、クリーニングに対して積極的な個体とそうでもない個体がいる。あるポイントで、とても積極的なエビを見つけた。クマノミが動きを止めると、すぐに飛び乗る。静かに見ているとかなり長い時間クマノミの体にいた。このポイントに潜るたびに訪れた結果、かなり気に入った写真が撮れた。

クマノミの口を掃除するカクレエビ奄美