大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ナンヨウカイワリ 秘めた特徴

アジ科のナンヨウカイワリは全長約80cmになり、伊豆諸島以南の太平洋、インド洋に分布している。主にサンゴ礁域のやや深いところを210数尾で回遊している。回遊魚のカスミアジ、ギンガメアジ、ロウニンアジなどと比べると、各ヒレの形や位置、体型などが若干異なるため、雰囲気で見分けることができる。

ナンヨウカイワリの群れ(座間味)

 

これまで本種と出会った場所を思い返すと、慶良間諸島の外洋の隠れ根だったことが多く、しかも水深は25mくらいだった。このときも沖の隠れ根で撮影中、2尾のナンヨウカイワリが来た。片方は真っ黒になっている。オスの婚姻色だ。メスを追尾していたが、寄り添うように並んだ。勢いよく移動するので、周囲の魚はあわてた様子だった。

ナンヨウカイワリのペア。周囲はコクテンカタギ(座間味)

 

慶良間諸島の東側にある無人島の沖の25mあたりで撮影していたとき、下のほうに魚群が渦巻いているのが見えた。エアーが少なかったので深度を保っていると、下のほうからナンヨウカイワリのペアがやって来た。オスは婚姻色になっている。それを撮ったところで浮上する時間になってしまった。深いところにいた魚群は不明のままだった。

ナンヨウカイワリのペアと深いところの魚群(黒島)

 

これまでナンヨウカイワリと遭遇したのは深いところばかりだったが、水深15mあたりで出会った。とはいえ、沖縄では生息数が少ないのだろう。図鑑などで本種の撮影地を見ると、ほとんどが小笠原だ。やはり伊豆諸島から小笠原諸島にかけてが分布の主流に違いない。

比較的浅いところに現れたナンヨウカイワリのペア(座間味)

 

砂底にフエフキダイと回遊魚が一緒にエサを探していた。回遊魚は雰囲気からナンヨウカイワリなのだが、8本くらいの縞模様があるため、不明種としてしまっておいた。今回、さまざまな図鑑を駆使して調べてみたら、ナンヨウカイワリは縞模様が表れることもあること、砂地で隠れている甲殻類や魚類を食べることもあると知り、ナンヨウカイワリと断定できた。縞模様は興奮色なのかもしれない。時間経過と共に縞は薄くなった。特徴を隠したがる魚もいるので、しつこく観察することも大事なのだろう。

フエフキダイとエサを探すナンヨウカイワリ(座間味)