大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

伊豆諸島名物 タカベ 

タカベ科のタカベは全長約20cmで、房総半島~九州および朝鮮半島南部に分布している。1866年に外国の研究者により新種記載された。主食は動物プランクトンで、外洋を群れで回遊している。青っぽい体色に、背中から尾にかけての黄色い帯が特徴。

タカベの群れ(八丈島

 

タカベは伊豆諸島に多く、他の海域ではあまり見られない。日本海には生息しないので、朝鮮半島南部でも少ないに違いない。これまでタカベに出会った海を思い返すと、八丈島が多く、あとは初島しかない。

伊豆諸島以外では珍しいタカベ(初島

 

八丈島でタカベを撮影しているとき、群れの一部が近くを泳いでいたニザダイを追い始めた。そしてニザダイの体に自分の体をこすりつけた。少し離れていたので撮れなかったが、ニザダイのウロコは細かくて紙やすりのようなので、おそらく寄生虫などを除去する行動なのだろう。

プランクトンを求めて回遊するタカベの群れ(八丈島

 

タカベは美味しい魚として昔から食されてきた。文献によると、平安時代に、タカベの塩焼きで酒を飲むのはこの上ない、という歌が詠まれたと記されている。とはいえ、現在は美味しい魚が溢れており、都内でタカベはほとんど流通していない。伊豆諸島へ行かない限り、なかなか味わえないだろう。やはりタカベは、伊豆諸島特有魚だ。

夏に脂がのってさらに美味のタカベ(八丈島