大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

真説・サメ

3月下旬にナショナルジオグラフィック別冊『真説・サメ~謎に満ちたすごい生態』が発売された。

悪者とされてきたサメを、最新の調査・研究を通して「海の守護者」にイメージチェンジさせるのがこの本の狙いだ。

ナショナルジオグラフィック 別冊『真説・サメ』

 

すごい写真も載っている。夕刻の水面に浮かぶツマグロと海鳥が同じ画面に写っていて、どちらにも照明が当たっている。一体どうやって撮ったのだろうか。

サメと海鳥の素晴らしい写真

 

いくつもの研究結果が掲載されているが、気になったのがカリフォルニア半島ホホジロザメ。時季になると、エサであるアシカやアザラシの繁殖場に集まることは知られていた。しかし晩秋になると姿を消す。そこで人工衛星で追跡できるタグを複数のサメに付けて調べた結果、遠く離れた太平洋の深海に行っていることがわかった。これまでその場所には生物は皆無とされていたが、イカやマグロなどが生息していることが判明したという。おそらく繁殖のために深海を訪れるのだろうとのこと。

オーストラリア南部のホホジロザメ

 

イタチザメはジュゴンやアオウミガメを襲うことがある。食物連鎖の頂点に立つサメがいなければ海は平和になると思い勝ちだが、実は逆。サメがいると草食動物や草食魚が怖がるため、海草を食べ尽くすことがなくなり、結果的に健全な環境が守られるという。

危険とされるサメはホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメ3種で、通常のダイビンングでは出会えない。一方、ダイビングでよく見られるサメはネムリブカで、日本にも多く、いうまでもなくおとなしい。次がツマグロで、その次がオグロメジロザメ。この3種はいずれも警戒心が強く、きれいに撮れる距離まで近寄るのは難しい。

サメは、1950年代から比べると、かなり減少しているという。乱獲、混獲が主な原因だが、成熟するのが遅いうえ、生涯に仔魚を産む数がとても少ないということもあり、一度減少すると回復するのは難しい。海の生態系を守るためにも、保護する海域を増やすべき、とこの本は訴えている。

ネムリブカ(上左)、ツマグロ(上右)、オグロメジロザメ(下)