9/17のNHK「さわやか自然百景」は徳島・宍喰の海だった。黒潮の分流の影響でイシサンゴ類も多く、特にシコロサンゴがよく見られる。当然、熱帯系の魚類も多い。
9月17日の「さわやか自然百景」のタイトル
また、この海には特徴的なことが知られている。ある時季になると、テンジクザメが出現するのだ。なぜかこの海でしか確認されていない。番組では産卵の様子も撮影している。タイトルを見たときから、制作は日本水中映像だと確信したが、やはりそうだった。
テンジクザメ(さわやか自然百景より)
徳島県海部郡宍喰町には「阿波竹ヶ島海中公園」があり、1994年10月に取材した。漁船をチャーターして海中公園センターの研究員と潜り、海中景観や生息する生物の調査・記録が主目的。その際、現地のダイビンショップにタンクを借りに行ったら、水中写真家の中村宏冶氏がいた。テンジクザメについて調査に来たとのこと。テンジクザメはふだんは深いところで行動しているため、浅場に来るのは繁殖が目的と中村氏は考えていたのだろう。そして、地元ショップに観察と情報を依頼したものと思われる。
竹ヶ島(さわやか自然百景より)
テンジクザメの繁殖が確認されたのは最近のことで、『日本の海水魚』(97年発刊)には写真すら載っていない。番組では、テンジクザメのメスが岩の周りを回りながら産卵していた。
産卵中のテンジクザメ(さわやか自然百景より)
卵は10cmくらいで、端からひものようなものが出ていて、それを岩に巻き付けるためにサメは回っていたのだ。
テンジクザメの卵(さわやか自然百景より)
地元ショップから情報をもらい、いつか自然番組で使えると考えて引き出しに収めていたのだろう。現在中村氏は日本水中映像(株)の会長で、自身がロケに出ることはないものの、30年前の思いを後輩に託し、ようやく花が咲いたといえるのではないだろうか。
さわやか自然百景のエンディング