チョウチョウウオ科のフウライチョウチョウウオは全長約20cmになり、神奈川県以南の太平洋、インド洋に分布している。新種記載は1758年だが、日本初記録は不明。和名がどうして付いたのか気になったので、調べてみた。英名はバガボンド・バタフライフィッシュで、「放浪」とか「風来坊」という意味。行動範囲が広いというのが由来のようだ。和名は英名をそのまま訳して付けたのだった。
ペアで行動するフウライチョウチョウウオ(座間味)
本種の分布にインド洋も入っている図鑑が多いが、疑問がある。確かにタイ・プーケットのようなインド洋東端には生息するが、図鑑によってはインド洋北部や中央付近のモルディブまで分布に含めているものもある。数多く潜っているモルディブでは出会ったことがないので、はなはだ疑問だ。
インド洋には近似種のインディアンバガボンド・バタフライフィッシュがいる。体後部の黒帯が太いだけで、フウライチョウチョウウオとよく似ている。ちなみにプーケットでは両種が見られるし、コモド諸島の南エリアでも両種が生息している。
両種のルーツは同じと考えられている。大陸移動などの大きな変化で生息場所が分かれ、それぞれが分化したのだろう。そう考えると、分布が重なることは、分化の説明がつかなくなる。
太平洋とインド洋の境界付近のフウライチョウチョウウオ(コモド)
不思議なことに、コモド諸島では、フウライチョウチョウウオはインド洋の境界付近の南エリアでしか見ない。南エリアは海流の関係で水温が低い。なぜなのだろう。同じエリアにはインディアンバタフライフィッシュも生息し、いつの日か異種間ペアが見られるのでは、と期待している。そんな人間の思いなど知らんぷりで、今日も放浪するチョウチョウウオだった。
ペアで放浪するインディアンバガボンド・バタフライフィッシュ(コモド)