大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ナショジオ写真家が教える撮影術

先日配信されたナショナルジオグラフィックメールマガジンに、ナショジオ写真家が教える撮影のコツという特集があった。人物、夜景の次が水中だった。水中は、ナショジオ契約カメラマンのジェニファー・ヘイズ氏が文章と作例写真を担当している。

最初の写真はセンジュイソギンチャクとカクレクマノミ。解説文を読んで愕然とした。「遠隔から写真や動画を撮影するテクニックを活用すれば、この写真のように、警戒心を解いた自然な姿を捉えることが可能になる」と記されている。警戒心が強いカクレクマノミがいるのも事実だが、遠隔装置を使わなくてもわりと簡単に撮れる。

カクレクマノミ。背景が黒い(暗い)のは意図的だろうか

 

ワニの写真もあったが、キューバのどこどことしか書いてなかった。これこそ遠隔で撮りたい。

アメリカワニ

 

この写真は日本で撮ったように思えるが、撮影地は書いてない。解説文は「海底のガラスびん越しからこちらを覗き込むキイロサンゴハゼ」となっている。キイロサンゴハゼはサンゴに住むので、ミジンベニハゼの間違いだ。

ガラスびんから顔を見せるミジンベニハゼ。なぜこの比率なのかも不明

 

サメの卵の写真もあった。解説文は「トラフザメの胚。iPhoneで撮影した1枚」としか書かれてない。どう見ても後ろからライトを当てているうえ、カメラ側からもライトが当たっている。そういうことを書かないようでは「撮影術のコツ」の意味をなさない。

トラフザメの胚

 

もちろん写真は素晴らしいが、文章と作例写真が噛み合ってない。ジェニファー・ヘイズ氏の文章は 〇撮影機材のバッテリーが切れても、あきらめずに考えよう。〇GoProなどのアクションカメラを使おう。〇被写体を見つけたら1か所にとどまらず、動き回って良いアングルを見つけよう。〇スマートフォンを活用しよう。〇最も高い解像度で撮影しよう。〇撮影後は早くバックアップしよう。など作例写真とはあまり関係ない、総合的な話ばかりだ。人物と夜景の撮影のコツも読んだが、こちらは作例とリンクしていた。日本国内で配信するメルマガは、日経ナショナルジオグラフィックが行っているので、編集やデザインの担当者が独自に構成しているのかもしれない。

いずれにしても、ナショナルジオグラフィックは信頼性が高い科学雑誌なので、メルマガとはいえども、チェック体制をしっかり整えていただきたい。

夕暮れのフィリピン トゥバタハ・リーフ。広角レンズで捉えた、としか書いてない