大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

ルリスズメダイの地域変異

スズメダイ科のルリスズメダイは全長約7cmになり、伊豆半島以南の西部太平洋に分布している。主な生息場所はサンゴ礁の浅瀬で、九州以北で見られるものは幼魚と思われる。オスは全体が青で、目のところに黒いスジが入っている。ソラスズメダイと混同されることが多いが、本種は青一色で、黄色が入っていないので区別がつく。

ルリスズメダイのオス(奄美

 

メスも青一色だが、尾ビレが透明なのが相違点。このことから昔はオスとは別種と考えられ、コバルトスズメという和名だった。1975年に発刊された図鑑で、コバルトスズメルリスズメダイのメスと訂正された。しかし、その後もしばらくはコバルトと呼ぶ人が多かった。どうやら観賞魚業界を中心に浸透していた名前だったため、愛着があったのだと思う。

ルリスズメダイのメス(奄美

 

1990年ごろ、パラオルリスズメダイに似た魚を撮影した。体は青なのだが、口の辺りや腹ビレと尾ビレはオレンジなのだ。調べたら、ルリスズメダイのオスということがわかった。ちなみにメスはオレンジの部分はなく、日本のものとほぼ同じで、背ビレ後方に黒点がある。

ルリスズメダイのオス(パラオ

 

その後パプアニューギニアPNG)でもルリスズメダイのオスを撮影した。オレンジの部分は尾ビレだけで、パラオのものとは少し異なる。オーストラリアもこのタイプのようだ。メスはパラオとほぼ同じだった。

ルリスズメダイのオス。下にいるのがメス(PNG

 

パラオのものもPNGのものも地域変異といわれているが、もともとルーツは熱帯海域で、黒潮によって北へ分布を広げてきた。そう考えると、日本のものが地域変異ということになる。その理由は、日本には本種以外青一色のスズメダイは存在していないため、種を識別する目印のオレンジはさほど必要ない。そして時間の経過とともに現在の姿になったのではないだろうか。

アオサンゴに群がるルリスズメダイのメス(石垣島・白保)