大方洋二の魚って不思議!

写真を通して魚類の生態や海について考える

バンガイカーディナルフィッシュの生態

今回の写真展「海で逢いたい」のテーマ部門は顔だった。それに合わせてバリ島で撮ったバンガイカーディナルフィッシュの写真を出展した。親の口から赤ちゃんが外を見ている、という写真だ。


写真展とは別カットの写真(バリ)                                             

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タイトルと説明文は次のとおり。
「お口の中から初めまして!」
テンジクダイ科は口の中で卵を守り、ふ化と同時に子育てを終える。ところがこのバンガイカーディナルフィッシュだけは、ふ化後も口の中で育てる。赤ちゃんは外の世界に興味津々!








沈船に群がる成魚(バリ)
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ところが魚の大きさを書かなかったので、サイズを聞いてくる方がたくさんいた。確かにアップで撮っているので、この魚を見たことがない人はわからないはずだ。

成魚は全長約7cm









伊豆海洋公園通信の記事('956月号)                                           

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バンガイカーディナルフィッシュの生態は22年前の「伊豆海洋公園通信」に掲載されていた。オーストラリアの魚類学者ジェラルド・アレンと水中写真家ロジャー・スティーン両氏が、'9411インドネシアのバンガイ島で観察した記録が書かれていたのだ。くわえている卵の直径は約2.5mmで、他種より大きい。また本種はふ化後もある一定期間口の中で稚魚を保護することが判明した。この時点でそのような生態の海水魚は本種のみとのこと。くわえている親を採集したら稚魚は11尾で、大きさは約10mmだったという。残念ながら、稚魚が親の口から出入りする様子は観察できなかったとある。
ちなみに右下の写真は、採集後の標本写真。








イソギンチャクに住む2.5cmの稚魚(レンべ)

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バンガイカーディナルフィッシュはインドネシアのレンべとバリで観察・撮影した。本来はバンガイ島の固有種なのだが、人為的に分布が広がったらしい。レンべにはたくさん生息していたが、卵をくわえている成魚は少なく、やっと見つけた個体もなかなか口を開いてはくれなかった。

稚魚はガンガゼやイソギンチャクのそばにいる場合が多い。





ふ化寸前の卵をくわえている(バリ)
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バリのシークレットベイにも生息していて、訪れた7年前の10月は稚魚をくわえている親魚が数尾見つけることができた。
今回改めて画像を確認したら、ふ化寸前の卵をくわえているのがあった。かなりトリミングしたので、卵に入った稚魚がわかると思う。それにしても不思議な生態を持っているものだ。